2022年度「地球表層観測学」(近藤担当)
共用棟1階102講義室で実施しますが、ハイブリッドで配信も試みようと思います。ZOOMのURLはMoodleで連絡します。本講義では、環境リモートセンシングの対象である地球表層における諸現象、地表面を構成する様々な要素の分布と変化、人間活動による生産や環境への影響、等を理解し、それらの現象、事象を観測し、解析することができるリモートセンシングの方法について講義を行います。評価は3名の担当者ごとに小テストあるいは課題を課して評価します。 |
講義予定
連番 | 実施日 | 担当 | タイトル |
@ | 5月23日 | 近藤 | 環境リモートセンシング概論 |
A | 5月30日 | 近藤 | 植生のリモートセンシング1:人間と森林 |
B | 6月6日 | 近藤 | 植生のリモートセンシング2:植生変動 |
C | 6月13日 | 近藤 | 階層的リモートセンシング−グローバルとローカル |
D | 6月20日 | 近藤 | 都市環境リモートセンシング−ヒートアイランド |
*5回分の順番は決めましたが、近藤担当の最終年でもあるので、環境について近藤が考えつづけてきた話題に逸れることがあると思います。予定されたコンテンツのすべては終わらないかも知れませんが、このページで学んでください。なお、下記のコンテンツには過年度のものが含まれます。課題等の指示はMoodleでお知らせします。
講義資料 (地球環境科学特別講義Uと共通) テキストベース講義 地球環境科学特別講義Uも参照してください。
環境リモートセンシングは、環境とリモートセンシングの両方を扱います。環境を理解している研究者が、リモートセンシングにより環境を計測、モニタリングすることにより、より深い環境の理解が可能になります。事実だけでなく、真実を読み取ることができる知識、経験を修得すること、それが教育目標です。
課題 提出期限4月18日 メールで近藤に提出、件名に【地球表層】と入れること(後で検索しやすいから)
課題といってもアクティブ・ラーニングとするためのアンケートのようなものです。もちろん、大学院の講義ですので、自身の考え方を論理的かつ明快に記述してくれれば評価は上がります。
“環境”とは人間を中心に考えると、「人間(あなた)を取り巻き、相互作用する範囲」といってよいでしょう。だから、人によって環境の範囲は異なるという捉え方も可能です。グローバル化、情報化が進んだ現在、その範囲は地球全体あるいは宇宙に及ぶこともあります。この範囲は物理的なものだけではなく、情報を通じた相互作用で、“あなた”の意識の世界を形成し、それが“あなた”の考え方に影響を与えています。では、“あなた”が見ている世界、そして“あなた”の考え方を形成している“範囲”はどういう範囲か。あなたの認識を記述してください。
抽象的な表現になりました。 でも考えてください。世の中は“本質的なもの”を求め始めたと思います。新型コロナ禍はその流れを加速したといえます。大学も同じです。大学の本質的な価値が問われる時代になりました。学生も具体的な“考える力”が求められる時代になったと捉えてください。
【提出期限】 4月18日(金) ヘッダーに【地球表層】と書いてメールで送ってください。宛先はkondoh(at)faculty.chiba-u.jpまで。 その後の講義(このページ)でコメントします。
参考文献・参考情報
課題に対するコメント等(2020年度のものですが、参考まで) 2021年度のコメントはここに記述します。
ここでは回答頂いた内容について、コメントを記入します。あるいは、質問に対する回答掲載します。さらに、意見・異見をお寄せください。WEBを通じた対話を行いたいと思います。また、時々脱線もしたいと思います。 そこに本質的な意味があるかも知れません。
Future Earthが始まってから5年経ちましたが、実はうまくいっていません。それは、従来の国際研究プロジェクトを引き継ぐGRP(Global Research Projects)と、FEの理念である超学際(transdisciplinarity)実現の主体であるKAN(Knowledge Action Network)が分断されていることにあるようです。論文を書きたいGRPと、社会の変革を目指すKANの融合はどのようにしたら達成できるのでしょうか。
FEに関わる研究者を含むステークホルダーの間で、@世界観、A意識世界に関する対話を行う必要があると近藤は考えています。世界は物理が駆動するひとつのグローバルなのか、それとも地域が相互作用しながら入っている容れ物なのか。そして、人の考え方が形成されるのは何を見ているからなのか、その範囲は人によってどう異なっているのか。その範囲を近藤は意識世界と名付けました。 @世界観については、C階層的リモートセンシングで深掘りしたいと思います。
人と自然が相互作用する範囲である環境について議論を行う際には、人の意識社会の範囲を知ることにより、相手の考え方や立場が理解できるようになります(これをエンパシーといって良いと思います)。それによって目指すべき未来を共有することができ、Future EarthやSDGsの達成に向かって進むことができるようになります。
すでに課題に対する回答がありました。上記の二つの世界が人の意識世界を形成していることはほぼ疑いないと思います。だから、常に世界にアンテナを張り、何が起きているか、なぜ起きているか、理解を試みる習慣が大切だと思います。その際、旅行はもちろん大切です。ただし、地域における政治、経済、歴史、民族、文化、習慣、宗教、気候、地形、植生、...といった内容を意識して旅行をすると良いと思います。若いうちはどんどん世界を旅してください。ある程度経験をすると、文書や映像によって他人の経験を疑似体験することができるようになります。それによって、意識世界を広げることができると思います。
意識世界の形成にネットの影響は無視できないと思います。ただし、SNSだけでなく様々な情報もありますので、活用する術を身に付けてほしいと思います。あるサイトが役に立つと思ったら、その背景にある思想や哲学は何かを考えると良いと思います。また、一つの課題を扱うサイトでも、別の視点があるかどうかを調べるとよいと思います。例えば、災害については理学的な立場でハザードのメカニズムに興味がある分野だけでなく、現場の視点から災害を捉える社会学や計画学的な視点もあります。ネットというのは様々な視点にアクセスできるというメリットもあると思います。
人とのコミュニケーションのあり方を大切と考える意見を頂きました。相手の考え方、立場を理解することを共感(エンパシー、empathy)といいます。シンパシーの日本語を同じなのでややこしいのですが、ニュアンスが異なります。自分の考え方を伝えながら、相手の考え方を受け入れる、そんな態度が対人から世界まであらゆる場面で必要なのではないか。議論というより対話(dialogue)を深めることは相互理解のために大切なことだと思います。
学術会議の会員の一部が承認されなかったニュースは皆さんご存じだと思います。 大変なことが起きました。けっして皆さんに関係ないことではないと近藤は考えていますが、:学術会議設立の経緯、昨今の国際情勢、社会経済状況を俯瞰しなければ問題の理解は難しいと思います。そこで、ここでは学問の自由について考えて見たいと思います。自由には二つあります。@束縛されない自由、A自分の理念を持ち、自律的に考え、行動する自由。@だと、“学者さんはのんきでいいね”ということになってしまうかも知れません。学問の自由はAだと思います。科学の発展、社会のあり方の中に科学者としての考え方を位置づけ、自律的にその重要性を訴え、実現するための行動をする自由と近藤は考えます。今回はAが侵されたのでしょうか。それは現状ではわかりません。政府が理由を明らかにしていないからです。社会の変革あるいは改悪は少しずつ進みます。気が付いた時には手遅れにならないように、常に考え続ける態度が必要です。その際、科学者ならば、“私は〜考える。なぜなら、〜だから”という主張をしなければなりません。“私は〜思う。あなたはそれを認めるべきだ”というのは科学的態度ではありません。
これは良い表現ですね。自分が見えているものの“広がり”の向こうに“奥行き”がある。文章を読むと、歴史的経緯を“奥行き”と表現しているようです。それは極めて重要だと思います。ある事象が起きている歴史的経緯を知ることにより、問題の本質が理解できることがあります。例えば、公害問題を様々な当事者の居所(都市、地方)、歴史(高度経済成長、日々の暮らし)という異なる観点に視点を移すと、異なる状況が見えてくることがあります。一方、空間の観点で“奥行き”を捉えると、奥の向こうに見えていない世界があることも意識しなければならないかなと思います。遠隔地の環境問題をリモートセンシングで解析しようとするときは、この見えていない世界、あるいは事情を捉える必要があります。それは異なる分野、ステークホルダーの知識、経験の組み合わせが必要になります。それが“環境リモートセンシング”だと考えています。
これも重要だと思います。哲学者のエマヌエル・カントは「自然地理学」を著しているにも関わらず、実はケーニヒスベルクの街をほとんど出たことがなかったということは驚異です。当時の世界の一大貿易港だったケーニヒスベルクで様々な人から話を聞くことで、疑似体験することができたのではないかと思います。もちろん、凡人はそう簡単に他人の経験を自身の経験に置き換えることはできないのですが、若い時に世界を体験、それも世界の田舎中の田舎を経験すると、疑似体験の能力が身に付くのではないかと思います。近藤はアフリカのサバナ、アラビア半島の沙漠、中国の田舎など、海外の暮らしの現場をたくさん体験しました。内戦中のスリランカやイエメンでは軍の検問もたくさん通過しました。これで書籍や映像を通じて様々な疑似体験をする力がついたと思っています。リモートセンシング画像の現場が実際にあり、そこで繰り広げられている様々なことを想像する力で環境リモートセンシングを実現してください。
いいところに気が付きました。この世界は関係性が折り重なって形成されています。ひとりで生きるよりも、協力、協働、連携することにより、暮らしやすい社会になる。それはSDGsの17番目のパートナーシップ、Future EarthにおけるTransdisciplinartyの実現であり、世界が同じことを考えているということではないでしょうか。
地球温暖化、少子高齢化といった問題を取り上げると、ちょっと暗い未来になってしまいそうです。ここはあなたの意識を構成する世界の範囲を広げて世界で起きていることを理解する試みをしてはいかがでしょうか。問題は自分ではないだれかが自分のために解決すべきものではないのです。地球温暖化が問題になっている背景には何があるのか。視点を社会学、経済学、政治学、哲学、倫理学、等々様々な分野から眺めると見え方が変わってきます。おもしろいですよ。なぜ石炭が悪なのか。どうもヨーロッパ思想における正義に対する考え方があるようにも思います。時間があったら議論したいと思います。少子高齢化も視点を変えると違った世界が見えてきます。計画学、開発経済学、あなたの“意識世界の外側”に実は未来可能性がある領域を見つけることができると思います。60年以上生きてきてわかったことは、未来は予測できない、ということ。現在の問題に取り組み、そこから未来を展望するという視点があると良いと思います。
自分の小さな”世界”に囚われたら、現実の大きな”世界”を認識することはできない、という意見を頂きました(少し拡大解釈しています)。その通りだと思います。大学で学ぶ研究という行為は、自分のスタンダードが研究の世界のスタンダードにきちんと位置づけられるか、ということを問う行為でもあります。スタンダードを意識世界に置き換えるとわかりますが、これは社会の中の一人という立場でも同じですね。世界を構成する社会の広がり、様々な関係性の中で、自分の立場、意識を位置づけるということです。問題の本質を理解するということも同じ行為だと思います。意識世界を広げると、これまで見えてこなかった問題の側面が見えてきて、解決に近づくことができることがよくあります。例えば、公害問題がありますが、勉強してください。
人の考え方を形成する範囲は物理的だけでなく、意識的に到達できる範囲であるという考え方はナイスです。それを近藤は”意識世界”と呼んでいます。ここで“関係性”の存在を考えると、意識世界の姿がさらにはっきりしてくると思います。現在の意識世界の外側にある世界を想像することができると、現実の世界の有様が見えてきます。それは、あなたの成長を意味します。地球温暖化や新型コロナ禍は、これまで見えていなかった関係性に気づきを与えたと思います。その気づきこそが、SDGsやFuture Earthの達成に不可欠なものと考えています。
非常に大きな問題が起きました。対応のため、皆さんのレポートのレビューが遅れています。日本学術会議がどんな組織か、どんな活動をしているか、ホームページで確認してください。日本学術会議が世界の何に対応しているのか。それはISC(International Science Council)です。ISCと連携してどんな仕事をしているのか、それは日本および世界のwelfareとどんな関係があるのか、まず調べてください。
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以下は2019年度のものです。
様々な出来事を地図の上で考えるように心掛けることでしょうか。地図帳を用意しておき、ニュースで見聞きする出来事の起きている場所を確認してはいかがでしょうか。どこかに出かけるときは、その場所の景観がどのように形成されたのか、考えてみましょう。これは地球科学の知識が役に立ちます。そうしていると、いろいろな場所の景観や人の暮らしのあり方がわかるようになります。地域を楽しむという習慣が身につけば、豊かな心持ちになれます。場所によっていろいろなものが異なるというこが理解できれば、大学で学ぶ普遍的な知識をベースに、個別性を積み上げることができるようになり、あなたの問題解決能力が向上するでしょう。
小氷期のヨーロッパにおける魔女狩りを“いじめ”にたとえたわけですが、寒冷化が食糧や燃料の不足につながり、生活が脅かされたときの大衆の行動のひとつとして魔女狩りがあったのだと思います。ひとは不安なとき、何かの、あるいは誰かのせいにして一時の安心を得るという悲しい性があります。もちろん、社会的な差別や宗教的背景もあったかも知れませんが、これは専門書をひもとく必要がありますね。歴史および社会心理学の分野の見解を確認する必要があります。
もちろん、どちらも大切です。両方の視点を駆使しながら真実に迫る必要があります。解析的な手法に頼るひとが陥りやすい罠として、結果の前提となる仮定に対する考慮不足があります。ホッケースティック曲線がどのような手法で作成されたのか。曲線が表しているものは全球平均であるが、グローバルスケールの挙動とローカルスケールにおける挙動はどう違うのか、などなど。
現在のエネルギー事情、地球人口の増加、食糧生産方法(工業化された農業)などを考えると,メリットは考えられないように思います。
今まさに我々日本人がそれを考えようとしています。どのような未来を築くのか、あなたの課題でもあります。
たくさんあると思います。熱帯林の破壊もそうかも知れません。熱帯林を守るのは炭素の放出を減らすためというモチベーションも大切ですが、WTO体制のもとで、安くできる場所で作って、高く売れる場所で売るという市場経済が伐採を促進しているという視点も重要だと思います。
日本語ですが、池田 寛二著、「地球環境問題の現場検証」、八千代出版はインドネシアの事例が書かれており参考になると思います。初期のころの環境社会学の教科書にもインドネシアを事例とした報告があり、Global Issuesの背後にある地域の事情がわかります。
IPCC-AR4では「人間活動による可能性が高い」という表現になりました。それは、人為起源の温室効果ガスを入力しないと最近の気温上昇が説明できなかったからです。モデル計算の結果ですので慎重な表現になりましたが、科学とは仮説を提唱し、それが反駁されないうちはその仮説を支持するのがルールだと思います。この観点から、地球温暖化が人間活動に起因すると言っても良いと思います。
課題 4月19日講義分の課題。ちょっと難しいかも知れないので、4月30日を〆切にしています。
Moodle2021の課題でテキストベースで返信するように設定します。
関礼子ほか「環境の社会学」、有斐閣アルマ(2009)にこんな記述があります。「本書は、『人類にとっての生存基盤である環境』とか、『人類が共通に解決すべき地球環境問題』など、大上段に構えたところから環境と社会を語らない。むしろ、こうした語り口は、『脳内環境問題』として揶揄される。」
これは現在の問題を解決して未来を展望する立場と、想定されたあるべき未来からバックキャストする立場の違いを表していると考えられます。このように視点、視野、視座が異なると同じ問題が異なって見えることがあります。どんな事例が思い浮かびますか。
前掲の書籍ではツバルの水没問題が例として挙げられています(講義資料にあり)。あなたが取り組む環境問題が、現在の問題なのか、未来の問題なのか、現在と未来の関係はどうなっているのか。また、名前も顔も見えない平均的人間を対象としているのか、名前があり、顔があり、暮らしがある個々の人間を対象にhしているのか、こんな観点から考えてもよいと思います。
4月26日は途中まで話しました。5月10日は残りを話してから次の課題に進みます。課題はMoodleの5月10日分として出します。
森林はリモートセンシングの重要な対象です。衛星観測により現在の森林の状況、観測機関における変化、等がわかります。では、問題の本質はどこにあるでしょうか。リモートセンシングで見えたことの意味を理解することにより、問題解決に結びつけることができるかも知れません。ここでは、人間と森林の関わりについて講義します。ただし、対象を森林とした場合、その視点はたくさんあります。森林リモートセンシングを志すならば、まず森林に関する科学を学び、リモートセンシングを応用する課題を見つけてください。
課題 これは2020年度の課題です。2021年度はMoodle2021で課題を掲示します。
森林のリモートセンシングは この分野の要だと思います。だからこそ、背後で起きている人間の営みを知っておく必要があります。
インドネシア、スマトラ島の平野部における森林の変遷をGoogleEarthを使って観察し、判読してください。もちろん本格的な画像解析をやってもOK。@どんな変化が見えたか、Aその背後でどんな人の営みがあったか。
Aがアドバンスな課題です。ここがクリアできるかどうか、が大学院生の情報収集する力、考察する力の見せ所です。
課題に対するコメント等(2020年度のもの)
ここでは回答頂いた内容について、コメントを記入します。あるいは、質問に対する回答掲載します。さらに、意見・異見をお寄せください。WEBを通じた対話を行いたいと思います。また、時々脱線もしたいと思います。 そこに本質的な意味があるかも知れません。
みなさんは“環境”について学んでいる、研究しているという意識はお持ちだと思います。環境とは人と自然が相互作用する範囲で、そこにおける事象はあらゆる要因が積分されて生じています。このような対象を扱うときにタイトルにある3つの観点は重要だと思います。どこから見るか(視点)、どのくらいの範囲を見るか(視野)、どんな立場から見るか(視座)。これらが異なると同じものを見ていても見え方が異なります。また、これらの違いがわかると、真実がどこにあるかも見えてきます。今回の課題はこの3つの観点について考えてもらいたいと思い、設定しました。
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参考文献、参考資料
まず学術雑誌を調べる習慣を身に付けよう。以下は参考ですが、欧文ジャーナルも探してください。環境問題は論文だけではなくジャーナリストの報告にも真実が含まれています。例えば、内田道雄の著作を読んでみてはいかがですか。やる気のある方はFAOSTATを使って検証もできるかも知れません。
その他の参考文献・参考情報
レビューシート・質問票より(2019年度)
いい質問です。私も論文等で調べたことはないのですが、数世代分の時間はかかるかな。関東以北の二次林である落葉広葉樹は20年もあれば再生します。その間の農の生業は十分谷津における生態系を育むことができるのではないかな。数百年にわたって維持されている里山もあるわけで、そういう場所の生態系の特徴を調べた研究もあると思います。一方、近年では里山の荒廃が現実としてあるわけで、そのような場所における生態系や水循環の変化について調べる必要があると思います。
たくさんあります。地球全体の統計で森林は減っていますが、それは低緯度の発展途上国(この呼び方はきらいなのですが)で樹木を燃料として使うからと考えられます。これはわかりやすい例ですが、地域固有の関係はたくさんあると思います。探してみてください。
欧米にはもともとサルはいません。だからサルが侮蔑の対象になったとされています。以前、イーモバイルのCMで演説をするサルが当時選挙戦最中のオバマさんを侮辱しているのではないかと批判されたことがありました。それでCMは注視になりましたが、アジアではサルは神様であり友人です。サルが演説してもオバマさんを侮辱したことにはなりません。日本国内向けのCMにニューヨーク在住の日本人が批判したということで、アジアの文化を忘れた悲しい日本人の物語として記憶しています。
WEBで調べましたが両論ありますね。畑は国字で日本で生まれた漢字で、焼き畑は南方系なので関係ないというページもありましたが、これは違いますね。日本でも焼き畑は1950年代まで広く行われていました、漢和辞典で調べましょう。
どんな現象を対象とするかで答えは違ってきますが、得られると答えておきましょう。例えば、沖積低地の微地形を土地利用から判読できますが、これで過去の洪水の結果がわかり、水害に対する脆弱性がわかります。様々な例があると思います。
村がなくなると、田畑はもとの森林に帰っていきます。森林面積は増えるでしょう。それでいいではないかという考え方もあるでしょうが、やはり寂しい。田畑は何世代にもわたり、灌漑排水設備を維持し、土を作り、農を営むことにより維持されてきたひとつの生態系です。一旦失われたら簡単にはもとには戻らない。文明の発達は人にゆとりをもたらすはずであった。しかし、現実はそうなっていない。農山村の豊かな(お金で計る豊かさではない)暮らしができる場を維持したいと思いませんか。⇒これはサイエンスではないと思った方はいますか。Scienceの日本語訳は学術であり、農山村の暮らしを扱う計画学として農村計画学がちゃんとあります。
森林は氷期・間氷期サイクルの中でもちゃんと生き残ってきました。その分布域を大きく変化させながら、気候が不適な時期はレフュージでじっと耐え、気候が変わると一気に拡大しました。今の温暖化で問題となっているのは気温の上昇が早いために植生の移動が追いつかないのではないかという点です。IPCC-AR4でもたくさんの調査事例が集められました。しかし、森林の衰退は結果であり、それをもたらした要因が温暖化だけとは限りません。まだまだ調査、研究を進める必要があります。
野菜が捨てられる理由は、@価格維持、A価格競争に敗れ、出荷してもコストの回収ができない、B規格外のため出荷できない、などがあります。@は自己調整ですが、Aは産地間の競争があります。例えば、福島は首都圏より緯度が高いので東京の近郊農業の農家より遅れて出荷できるのですが、標高の高い場所にある長野の生産農家の出荷時期と重なり、長野による大量出荷で値崩れを起こされて負けたことがある、なんて話を聞きました。農家は都会人が考えるより遙かにビジネスマンであり、常に競争しているのですね。Bとしては二次加工業者や外食産業が決めた規格を外れてしまうと納品を拒否されるということがあります。ダイコンの用途として刺身のツマがありますが、ダイコンが育ちすぎるとふっくらと盛り上がらなくなるのでツマには使えなくなるそうです。そんな場合でも、ネットを利用してアピールして漬け物用として安価で出荷するというような手段もあるのではないか、と農協の方がおっしゃっておりました。
これも確認する必要がありますが、カロリーベースが一番自給率が低くなるということがあります。これが農水の政策上都合がいいということでしょうか。これ以外に、出荷量ベース、取引高ベース、などいくつかの計算方法があります。捨てられてしまう食品が問題になっていますが、消費量ベースで計算できれば、実は食糧自給率はもっと高くなるはずです。
私もチーバくんが好きなのですが、千葉県には他にも、とみちゃん、ワラビー、ピーちゃんナッちゃん、うなりくん、などがおります。新しいキャラも生まれています。講義と関係ないではないかとおっしゃる方もおられると思いますが、実は関係がある。地域における人と自然の分断を修復するためにいろいろな活動を行っていますが、地域の価値に気がついて頂くためにゆるキャラにも仕事をして頂いて下ります。千葉県の印旛沼水循環健全化会議では印旛沼環境フェアを通じて皆さんに身近な環境の問題に気がついて頂く活動を行っています。ホームページはここですが、今年もやります。10月20日(土)の予定ですので、ホームページをチェックしてください。
7月13日講義分
災害は“わがこと化”してとらえることが大切です。あなたはすでに“ひとごと化”しています。あなたが、忘れないこと。それが大切です。
干ばつの要因には気候要因と人間要因があります。気候要因に対応するには、まず気候の特性を知ること。過去を知り、未来を見通すこと。モデルによる予測も現在では手段として考えられますが、自然の特性を知らないままでモデルに頼る社会は極めて脆弱な社会だと私は考えます。人間要因に対しては、土地の生産性の劣化を引き起こす要因を理解すること。ここに“サイエンス”の役割があります。人と自然の関係性、すなわち環境を理解することにより、干ばつの影響を最小限に抑えることが可能となるはずです。同時に、社会、経済、政治、行政、等の役割も尊重し、包括的な視野の中で、総合的な対策を立案できる力を養ってください。気象・気候をコントロールすることはできませんが、国際社会を含む社会全体として干ばつに適応できるシステムを構築することはできると信じています。
講義で示した図に記載された水位は計画高水位です。洪水が起きたときは内水は排水機場においてポンプで河川に排水されます。沖積低地に立地している都市は様々な治水施設によって守られているということを意識してください。それは国民の税金で維持されています。
いくつかの理由があります。まず、工業用水の節水、再利用技術が進んだこと。例えば、千葉県の京葉工業地帯では当初は工業用水は地下水でまかなう予定でした。しかし、地盤沈下が進行し、地下水利用が規制されたために、企業は節水技術を進歩させたということがあります。水道については有収水率が上がった、すなわち水道水の送水中における漏水が減ったということがあります。水道水といえども浄水場から送られた水が100%家庭まで届くわけではないのです。日本の水道は諸外国と比較すると優秀です。しかし、次の世代では老朽化問題にどのように対処するか。これが課題となるでしょう。
国土交通省のハザードマップポータルサイトを参考にしてください。
レビューシート・質問票より(2019年度)
私がここで述べることのできる確立した方法はなく、都市計画、農村計画等の諸分野でまさに議論されているホットな課題です。ぜひ調べて見てください。様々な観点が必要でしょう。高齢化社会に対する適応をどうするか、ということも関係しますし、低成長時代を見据えた都市のあり方、なんて観点も必要ですし、自然との共生、食糧自給、様々な観点から包括的に捉える必要があります。2000年頃に都市計画三法の改正がありましたが、地域が地域のあり方を自分で決めることができる時代になりつつあるという点は重要だと思います。若者がこういう課題に真剣に取り組んでくれる社会、なんてのも関係するかも知れません。
農業のスペクトルの両端には、ビジネスとして大規模化、マニュアル化して進めようとする農業と生業として地域の暮らしのなかに溶け込んで、地域そのものを作って行く農業の二つがあるように思います。もちろん、どちらが正しいということではありません。永年にわたる農業の営みは地域の生態系、水・物質循環と融合し、独自のシステムを作り上げています。こういう農業を保全する必要があると私は考えています。大規模化はすべての農地で達成できるわけではありません。自然と共に元気に、誇りを持って、少し豊かに暮らせる社会もちゃんと残っていれば私は安心になります。
いい観点です。私は農村計画学会、環境社会学会に入っていますが、学会誌ではいつも新たな視点に気づかされます。日本の環境社会学は水との関わりが深いので、環境社会学の教科書はためになります。思想、哲学の分野も環境を考える分野があり、大変参考になります。リモセンやGISは現場で何が起きていることの本質を理解すると、パワーを発揮するようになります。お勧めの本は各講義のページで紹介していますので参照してください。
民間デベロッパーなども明確な理念を持って仕事をしている企業はたくさんありますよ。それよりも、自分たちの所属する社会のあり方に各個人が責任を持って考えるという態度が重要だと思います。
大きな違いを感じますね。日本も実用衛星の継続ができたら地球環境はじめ様々な分野でプライスレスの貢献ができたはずです。その根本には行政と専門家あるいは研究者の分断があるのではないかと思います。素人である予算決定者に短時間でわかりやすく説明できること、予算決定者が責任をとらないこと、などなど、こういう状況が国益を損ねていると思います。でも、がんばっている方々もたくさんいますので、あなたも我がこととして日本の未来について考えてください。宇宙基本法が改正されていますよ。どんどん状況は変わって行きます。
講義資料 学術会議公開シンポジウムの資料を使って深掘りします。テキストベース講義
2019年12月に開催された学術会議公開シンポジウムにおいて、「リモートセンシング研究からSDGsへの貢献」と題して講演しました。これは、「SDGsへの貢献」が共通ワードとなっているシンポジウムです。学術会議は現在大変な荒波にもまれていますが、日本が学術(scienceの日本語訳)を通じて世界に貢献する窓口として機能しています。日本のための科学技術を推進する組織が総合科学技術・イノベーション会議です。もはや日本には世界の幸せを考える余力は残されていないということでしょうか。
副題に「達成は協働、連携で」と書きました。科学者が論文を生産したら、書いてあることは誰かが社会に実装し、役立てるのでしょうか。考えてください。日本は縮退社会に入りました。成長時代の考え方はだんだん通用しなくなります。世界も同じです。だから、SDGsが出てきました。SDGsの17番目の目標はパートナーシップです。
課題
課題は今回はお休みにします。ただし、考えてください。質問を受付け、ここで答えることにします。
近藤のヒートアイランド研究は1987年10月に東京都立大学理学部地理学教室に着任したときに始まりました。同じ日に着任したのが古気候、ヒートアイランド研究で有名な三上岳彦先生でした。 三上先生はランドサット5号の首都圏の夜間熱赤外画像を持っており、解析を託されたのがきっかけでした。
1984年8月14日の午後9時頃に撮影された熱赤外画像には首都圏と関東平野の諸都市のヒートアイランドが明瞭に記録されていました。ところが、接地境界層、ヒートアイランド研究で有名なOke教授も連名するRoth et al.(1989)には“夜間のヒートアイランド強度と衛星による輝度温度分布の相関は低い”と書いてありました。なぜか。ここに研究のモチベーションが生まれました。
参考文献・参考情報
レビューシート・質問票より
これについては頭の中に情報源がありませんが、冬の夜間のTM画像(日没から約4時間)では関東平野内の諸都市の高温部は良く見えません。昼間の蓄熱の大きさからすると、夏の方がヒートアイランド強度は大きいような気がしますが、解析してみませんか。空間分解能は粗いのですが、“ひまわり”ならば1時間ごとのデータがあります。
講義では広島市の市街地において中心地で高温化した気流が風下に流れることを示しました。同様なことは東京でもあり、埼玉県東部の高温下は東京都市域からの移流の影響があるとされています。熊谷など、内陸の都市では別の要因もありますが、下記の本が出ています。こちらの本をまず参考にしてみましょう。
内陸都市はなぜ暑いか−日本一高温の熊谷から−、福岡・中川編著、成山堂書店、172ページ、\2,730−
マクロな観点からは都市計画により「風の道」や「グリーンベルト」を設置するといったことが考えられます。ミクロには緑化ですが、効果は限定的です。夏の暑い日にはミストを散布する、打ち水、といった策もありますが、ますます効果は限定的ですね。
1987年10月に東京都立大学地理学教室に助手として着任しました。初めてできた地理情報学講座でリモートセンシングの地理的現象に対する応用が研究室における仕事でした。その時、同時に着任されたのがヒートアイランド研究で有名な三上岳彦先生。解析してみないかと、ランドサットの夜間データ(当時はオープンリールの磁気テープ)を手渡されて画像を見てピンときていくつか論文を書きました。ヒートアイランドについてはRoth et al.(1998)の論文に対抗してやろうと思ったのが、エネルギー源になりました。
三つほど論文を書いた後、ヒートアイランドからは離れてしまいましたが、それは当時流行始めていた境界層に関する微気象観測やモデルについていくのがしんどい、というか他にもやりたいことがあったから。現在は、都市計画、農村計画の立場から、暮らしやすい街を作るということに関心が向いており、ヒートアイランド対策も頭にあります。一昨年、千葉NTの谷田武西の湧水調査をやっていたとき、市街地では38度の酷暑だったのに、谷津の中はひんやりしていました。未来の都市・農村研究にこれまで培ってきた“地理的現象に対する理解”を取り組んでいきたいと考えています。
ローカルには効果はあります。しかし、都市域全体のスケールで考えると、現状ではまだまだ足りません。現存する都市の緑化によりヒートアイランドを軽減するには極めて大面積を緑化する必要があります。シミュレーションにより評価した研究があると思いますので、検索して見てください。園芸学部の本條先生も計算をやられていました。
ポストコロナ社会はどうなればよいと思いますか。あなたのプランを聞かせてください。〆切は5月末にしましょう。近藤までメールで送ってください。