環境リモートセンシング研究センター共同利用研究会「GPS気象学ワークショップ」  

6月26、27日の2日間にわたり、「GPS気象学」の第1回ワークショップが自然科学研究科大会議室で開催されました。このワークショップは、「GPSによる日本列島の水蒸気可降水量情報のデータベース化と気象学、環境科学、水文学などへの利用に関する研究会」というタイトルのもとで環境リモートセンシング研究センターの共同利用研究会として開催されました。平成9年度から科学技術庁振興調整費の総合課題「GPS気象学:GPS水蒸気情報システムの構築と気象学・測地学・水文学への応用に関する研究」(略称GPS/MET Japan)がスタートするにあたり、プロジェクトに参加する研究者だけでなく一般の研究者の方にも参加してもらい、「GPS気象学」に関する議論と理解とを深めるために計画されたものです。
 さて、最近はカーナビゲーションにも用いられ広く知られるようになったGPS(Global Positioning System)ですが、これと気象学がどのように結び付くのか疑問に思われる方も多いと思います。もともと測地学の分野で発達してきたGPS精密測位ですが、最大の誤差要因は大気中の水蒸気です。一方、GPSによって大気中の可降水量(単位の底面積の気柱に含まれる水蒸気量)が推定することが出来ることが明らかになってきました。測地学ではノイズである可降水量の情報をGPSから取り出し、気象学・水文学等の研究に利用する。そして測位の精度を上げるために気象の情報を測地側にフィードバックしようという計画が測地学と気象学の研究者の間で作られた「GPS気象学」プロジェクトです。
 このプロジェクトでは全国に展開された1、000点近い国土地理院GPS連続観測システムで得られる全国の可降水量データを気象庁数値予報システムと有機的に結合して、日本域における可降水量に関する情報の時間空間分解能を飛躍的に向上させること、その知見を用いてGPSによる地殻変動観測の精度向上およびメソスケール気象現象の数値気象予報の精度向上を図ること、さらに気象学、測地学、水文学等の研究を支援するためのデータベース「GPS水蒸気情報システム」を構築し、その応用について調査研究を行うことを目的としています。
 今回のワークショップは「GPS気象学」のキックオフワークショップとして、GPS可降水量情報の現状とその可能性、その期待される応用研究、また、GPS可降水量の推定に係わる問題点等について、気象学、測地学、水文学、環境科学等の幅広い分野の研究者による活発な質疑討論がなされました。また、異なる分野の研究者の間で「GPS気象学」という研究課題について、お互いに共通の認識が醸成され、今後3年間の研究の推進について非常に良い協力体制が作られつつあることが実感されました。参加者は総勢93名にのぼり、「GPS気象学」に対する関心と期待をひしひしと感じることができました。
 環境環境リモートセンシング研究センターではGPS気象学プロジェクトによって得られる時間空間分解能の高い可降水量分布情報を収集・アーカイブし、他の地理情報(気象データ、地形データ、土地被覆、人文・社会学的データ、等)と重ね合わせ解析する情報システムを構築し、環境科学・水文学分野の研究に応用していく予定です。特に、数100kmスケールにおける大気と地表面の相互作用の解明に重点を置いた研究を推進し、数値予報の精度向上にフィードバックすることも目的としています。