リモートセンシングにおける分光学的基礎
 
1999年6月16日(水) 10:00−17:00
千葉大学けやき会館  3F レセプション・ホール
 
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■セッション1 10:00〜11:15
 
1) リモートセンシングと分光(10分)       竹内延夫(CEReS)
2) リモートセンシングにおける放射過程(25分) 久世宏明(CEReS) 
3) 大気の観測とスペクトル(25分)     青木忠生(気象研) 
4) COの第一倍音帯の低温下における吸収線パラメータの測定(15分)
          深堀正志、青木忠生、青木輝夫(気象研)、石田英之、渡辺猛(東レ) 
 
■セッション2 11:30〜12:30
 
5) 2方向性反射スペクトル(25分)       山本博(アジア航測)
6) アルベド推定におけるBRDFの影響(15分)     土田 聡 (地質調査所) 
7) 衛星データと観測軌道(25分)           橋本俊昭(CEReS) 
 
■セッション3 13:30〜15:15
 
[計測センサ]
8) GLI(Global Imager)の観測要求とセンサーパラメータ(25分)  五十嵐 保(NASDA)
9) 草地における水文過程のリモートセンシング実験(15分)
     樋口篤志(CEReS),西田顕郎,飯田真一(筑波大),近藤昭彦(千葉大学CEReS)
10) 個葉の分光反射特性の実験的研究(15分)         西田顕郎 (筑波大学)
11) 植生被覆率によるスペクトルの変動(15分)        石山 隆 (千葉大CEReS)
12)   大気センサと微量気体の分光計測(35分)       鈴木 睦(NASDA)
 
■セッション4 15:30〜16:50
13) ライダ計測と分光(20分)                  竹内延夫(CEReS)
 
[分光情報を利用した衛星データ解析]
14) GMS-5による雲データの解析(20分)              岡田 格(CEReS)
15) 衛星から観測される広域エアロゾル分布(20分)         向井苑生(近工大)
16) 衛星による地球観測の今後の展望(20分)           五十嵐 保(NASDA)
 
講演の概要
 
1)  リモートセンシングと分光         竹内延夫(CEReS)
 
[概要]
 リモートセンシングの定義について、原理的観点からと、通常使われている用法について述べる。次いで本シンポジウムの立場(衛星リモートセンシングを主たる対象とし、応用面では大気の計測を特に取り上げる)を説明する。さらに衛星データから地球観測に関する情報を抽出する際に、如何にスペクトルデータが重要であり、画像データの判別・分類に分光学的手法が使われているかについて、概説する。
 
2)  リモートセンシングにおける放射過程 久世宏明(CEReS) 
 
[概要]
 本講演では、太陽光を光源として利用する衛星リモートセンシングおよび、これに関連する地上からの大気のリモートセンシングを想定し、可視域を中心とする電磁波の大気中での伝搬の基礎となる物理的過程について議論する。大気分子の吸収については他の講演に譲り、主として大気中の分子によるレイリー散乱とエアロゾルによるミー散乱の影響を考え、その物理的基礎を中心としてまとめたい。通常の取り扱いよりも掘り下げて散乱断面積の導出について考察する。
 
3)  大気の観測とスペクトル     青木忠生(気象研) 
 
[概要]
 大気気体の吸収スペクトルとその特徴についてマイクロ波から紫外線まで外観し、大気のリモートセンシングにおける観測対象と手法、及び各物理量観測に利用されているスペクトル領域について概説する。さらに、実際に大気上端と下端で観測されるスペクトルの比較や、仮想的大気における光学的厚さの計算によって、大気各層の情報がどのようにスペクトルに含まれるかを議論する。最後に現在、リモートセンシングにおいて気象予報や他の地球科学から要求されている物理量の精度と、それを満たすための分光データの精度および課題についてその概要を述べる。
 
4)  COの第一倍音帯の低温下における吸収線パラメータの測定
          深堀正志、青木忠生、青木輝夫(気象研)、石田英之、渡辺猛(東レ) 
 
[概要]
COの第一倍音帯[(2-0)帯]に対し低温下での吸収実験を行い、線強度と半値半幅を測定した。室温と低温の線強度と半値半幅から、それらの温度依存性などを求めた。 高分解フーリエ変換型分光計(Bruker IFS 120HR)を用いて吸収スペクトルを測定した。光路長8.75cmの低温セルを製作し、温度を250Kと200Kに設定した。試料気体として、COの純気体、COとN2の混合気体及びCOとO2の混合気体を用いた。 250K及び200Kにおける線強度は296Kから予測される値とほぼ同じであった。また、COとN2の衝突幅はCOとO2の衝突幅よりも常に大きな値を示した。半値半幅の温度依存性を表す指数を求めると、COとN2の衝突幅に対しては、回転量子数に大きく依存せず、ほぼ0.75付近の値が得られた。この結果は、Varanasi et al. (1987)の結果とほぼ同一であった。
 
5)  2方向性反射スペクトル         山本博(アジア航測)
 
[概要]
 野外での分光放射計測データを相互に比較できるように,計測を規格化された方法で行うことが必要である.野外での反射の定義と,二方向性反射分布関数BRDFの定義について述べ,このBRDFを計測するために提案されている各種の方法について述べる.また,水田を対象にして
実測した二方向性反射データの特徴を考察し,そのデータを主成分分析して得られた二方向性反射の特徴について検討する.
 
6)  アルベド推定におけるBRDFの影響    土田 聡 (地質調査所) 
 
[概要]
 衛星解析おいて陸域地球表面物質はしばしば等方散乱体として扱われる.しかし,等方散乱に比較的近い性質を持つと言われる砂漠域(特に乾燥湖等)でさえ,等方散乱と,かなり異なった反射特性を示す.地球環境変動の解明を目的とした衛星データからのアルベド推定も期待されているが,この反射特性の問題は避けて通れない.本研究では,地表面の二方向性反射特性(BRDF)を考慮した大気−地表系のモデルを構築し,そのシミュレーションデータからアルベド推定を行う際のこのBRDFの影響について推察する.
 
7)  衛星データと観測軌道          橋本俊昭(CEReS) 
 
[概要]
衛星の軌道には様々なものがあるが,地球観測用衛星の多くが用いている軌道は静止軌道と極軌道である.前者はGMSに代表されるように,高頻度で広い範囲を観測する場合に用いられる.一方後者は,LandsatやNOAAのように,高分解能から低分解能のセンサまで,また狭域観測から広域観測まで色々なセンサに利用されている.本発表では,これらの軌道の地球観測に対する特質を説明する.実際の各種利用分野においては,どのセンサデータを用いるかは衛星軌道だけで決定するものではなく,他の要因も踏まえて決定される.どのようなデータがどのような利用分野において利用されているかを,衛星軌道やその他の観点から概説する.
 
8)  GLI(Global Imager)の観測要求とセンサーパラメータ 五十嵐 保(NASDA)
 
[概要]
 衛星からの地球観測を目的とするイメージングセンサの観測要求に対応するセンサシステムのパラメータ選定は、観測衛星ミッションの成否を決める重要な研究である。2000年11月に打ち上げが計画されている地球環境観測技術衛星ADEOS-IIにはグローバルイメージャ(GLI:Global Imager)が搭載されるが、観測の目的は陸域、海洋、大気、雪氷圏の地球物理パラメータをグローバルに観測し、地球規模の環境変動を定量的に把握するデータセットを作成することである。このために必要なセンサパラメータの選定について概要を述べる。
 
9)  草地における水文過程のリモートセンシング実験
     樋口篤志(CEReS),西田顕郎,飯田真一(筑波大),近藤昭彦(千葉大学CEReS)
 
[概要]
 草地において、各種水文過程(蒸発散や光合成等)の観測と分光観測を同時に行い、水文過程のリモートセンシングの可能性を検証中である。 観測地点は筑波大学水理実験センター熱収支・水収支観測圃場(半径80mの円形圃場)であり、ここでは気象(気温・運動量フラックス等)・水文要素(流出量・地下水位等)がルーチンで連続観測されている。植生はセイタカアワダチソウを中心とするC3植物とチガヤ・ススキ等のC4植物が混在する草地である。本観測地点にて以下の観測を継続して行っている: 上向き・下向き短波放射量・アルベド、土壌水分量、PAR、地表面温度(放射温度計)この他に、定期的に、PAR・上向き短波放射量・地表面温度・土壌水分量の多点移動観測、草丈、LAI、バイオマス、気孔コンダクタンス、クロロフィル量、可視〜近赤外反射スペクトル、中間赤外〜熱赤外放射スペクトル、BRDF観測、および、タワー頂部からの可視・近赤外・熱赤外画像取得を行っている。
 
10)  個葉の分光反射特性の実験的研究 西田顕郎 (筑波大学)
 
[概要]
個葉の可視・近赤外域における分光反射特性は、葉の構造、水分量、色素量、セルロース・リグニン量、タンパク質濃度などによって決定され、既にモデル化もなされつつある(例えばJacquemoud and Baret, 1990)。しかしながら、葉の活性状態の指標として注目されているレッドエッジの動態についてはまだ不明確な部分が多い。本研究では、葉の乾燥時のレッドエッジ移動が、クロロフィル濃度の変化によらずに起きることを実験的に示し、その理由を考察した。
 
11)  植生被覆率によるスペクトルの変動  石山 隆 (千葉大CEReS) 
 
[概要]
 リモートセンシングによる植生モニタリングの評価の尺度としていくつかの植生指数が提案されている。その中で最も一般的に用いられる植生指数としてNDVIがある。NDVIはバイオマス、植生被覆率、活性度などいくつかの要素の影響を受ける。NDVIは可視部の赤バンドと近赤外バンド、例えばMSSのバンド5と7、TMではバンド3と4、NOAA/AVHRRではバンド1と2などを用い、両者の正規化された差によって定義される。この手法を用いて多くの研究者により地球規模や地域の植生指数図が作られている。現在、NDVIとこれら植生の物理量との関係は完全には解明されていない。本研究では、衛星データからバイオマスを推定する過程で重要な指標となる植生被覆率および葉面積の情報を、分光放射計による反射率から求めたNDVIから評価することを試みた。
 
12)   大気センサと微量気体の分光計測 鈴木 睦(NASDA)
 
[概要]
大気環境リモートセンシングに対する、科学的・社会的要請が高まってきたことは、オゾン層破壊の解明におけるNimbus-7/TOMSの果たした役割、画像としてのオゾンホールの明示、等からも明らかであろう。写真測量から出発したLandsatに代表される画像センサと対比して、気温・水蒸気・大気微量成分などのリモートセンシングは分光計測に基礎を持っている。我が国でも、1996年のADEOS衛星以降、相当数の衛星搭載大気センサーが、実現し、また今後も計画されている。これらのセンサーは、それ以前の模倣的な開発から、基礎アイデアから機器開発、更にはデータ処理まで、独自の試みがなされている。ここでは、諸外国の大気センサとの比較から、これらの国産センサの特徴を示し、微量期待の衛星からの分光計測の現状を紹介する。
 
13) アクティブセンサーとしてのライダー計測      竹内延夫(CEReS)
 
[概要]
アクティブセンサについて、可視・近赤外領域、およびマイクロ波領域のセンサの性質と特徴について紹介する。可視・近赤外領域のアクティブセンサであるライダについてその原理、種類、測定対象、性能・仕様、装置や観測例について述べるとともに、現在実用化に向けて発展中のスペースライダーについて紹介する。
 
14)  GMS-5による雲データの解析 岡田 格(CEReS)
 
[概要]
雲の存在は放射収支の観点から気候を決定する一つの重要な要素である。本研究ではGMS-5(ひまわり5号)の観測データを用いて、最終的には地表面放射収支の推定を目的として雲情報の解析をした。GMS-5の持っている、主に11μmおよび12μmのチャンネルを使って判別した雲の季節変動、時間変動を示す。これまでにある観測資料として一般的に利用されるISCCP(国際衛星雲気候計画)の解析においては、可視域と11μmを利用して、巻雲の判別をしていて、それは昼間のみに限られる。しかし、11μmと12μmのチャンネルを使うスプリットウィンドウでは夜間も利用が可能である。スプリットウィンドウによる巻雲の分離は雲頂高度の推定による雲種の判断に大きな影響を与えた。
 
15)  衛星から観測される広域エアロゾル分布 向井苑生(近工大)
 
[概要]
 大気エアロゾルは地球大気のエネルギーバランス(放射収支)に影響を与え,通常放射を抑制する方向に働くといわれている.地球規模の気候変動を探るには,エアロゾルの広域分布を把握しなければならない.ADEOS(みどり)衛星搭載センサーPOLDERデータを用いて,エアロゾル光学特性の全球分布図を導出するアルゴリズムと得られた結果を紹介する.
 
16) 衛星による地球観測の今後の展望 五十嵐 保(NASDA)
 
[概要]
 地球観測ミッションには、グローバルな気候変動に関連する大気・海洋・陸域・雪氷の地球物理量の変動を定量的に観測するミッションとより人間活動に直接的に影響を及ぼす土地利用、農林業、水産業、防災、資源開発・管理等の局地あるいは地域の観測を行うミッションがある。グローバル観測の代表的な衛星例として我が国ではADEOS, 2000年に打ち上げが計画されているADEOS-II, 更にGCOM-A1, -B1の研究が進められている。また、NASAではEOSESAではENVISATの計画がある。また地域観測には陸域観測技術衛星ALOS計画がある。更に小型衛星や宇宙ステーションを利用する新規開発センサの実証計画がある。これらの将来計画について概要を述べる。