和文研究課題:二波長同時発振小型可搬CWライダー用光源の開発
英文研究課題
研究代表者 尾松孝茂(千葉大学工学部・助教授)
研究分担者 立田光廣(千葉大学工学部・教授)
Takashige OMATSU (Associate Professor, Faculty of Engineering, Chiba University)
Mitsuhiro TATEDA (Professor, Faculty of Engineering, Chiba University)

Abstract
We investigate thermal lens in LD pumped NLYAB laser with laser operation and without laser operation using holographic shearing interferometry and bending cavity. Thermal lens of NLYAB has a strong dependence of photon flux inside cavity. The thermal lens with laser action is 40% smaller than that without laser operation.

概要
半導体レーザー励起固体レーザーでは、励起光である半導体レーザー光が固体レーザー結晶に吸収される際に発生する熱がレーザー結晶の屈折率変化をもたらし、結晶がレンズとして働くという、いわゆる熱レンズ効果が現れる。特に、Q-switchレーザーでは、Q-switchセルを共振器中でレーザー光が最小ビーム径を持つ位置に挿入する必要があり、熱レンズ効果は共振器設計の重要な指針を与える。また、NLYABレーザー結晶はそれ自体が非線形光学結晶である自己周波数逓倍型結晶である。それゆえ、NLYAB結晶では、熱レンズ効果は共振器構成を変化させるだけでなく、熱的な位相不整合を誘起するため、レーザー光出力効率に直接影響を与える。従来、固体レーザー結晶の熱レンズ効果は結晶を一枚のレンズとしてみなし、結晶の励起領域へ入射したレーザー光の集光度から、評価するのが一般的であった。この方法は簡便ではあるが、測定精度が低く、また、励起領域の直径が100μm程度と極めて小さい端面励起型半導体レーザー励起固体レーザーには適用しにくい。また、Q-switch動作のようにレーザー発振、停止を周期的に繰り返し、動作中に共振器内光子密度が大きく変化する場合、反転分布密度に応じて非輻射遷移確率が変化し、熱レンズ効果が周期的に大きく変化することが知られている。しかしながら、レーザー動作中のレーザー結晶内の熱レンズ効果を直接測定した実験例は報告されていない。本研究では、新しい熱レンズ効果測定法であるホログラムシェアリング干渉法を考案し、なおかつ、L字型共振器を用いて、数100μmという極めて微少な励起領域内の熱レンズ効果をNLYABレーザー発振中、停止中に直接、測定することに成功した。この測定結果から、レーザー発振中は動作停止中に対して熱レンズ効果が約60%程度に減少することが明らかになった。この測定結果はQ-switch NLYABレーザー共振器設計に重要な指針を与えるものである。