T:自然地理学の基礎と方法(12月8日) | U:水害(12月15日) | V:土石流・崩壊(12月22日) | W:地すべり(1月5日) |
X:地震災害(1月12日) | Y:津波災害(1月19日) | Z:火山災害(1月26日) | [:地盤災害・海岸侵食(オンデマンド) |
災害は誘因(ハザード)と素因が相互作用して発生します。素因には土地の性質等の自然要因に加えて、土地利用の状況等の人間要因もあります。
【課題1】 土地の性質と災害発生の関係について事例をひとつ以上挙げて説明しなさい。
【課題2】 災害の発生に、人間側の要因が関わっている事例をひとつ以上挙げて説明しなさい。
注)・ワープロでA4サイズ2枚を限度として記述してください(WORD、一太郎、OpenOffice、テキスト)。
・必ず名前を記入してください。
【締め切り】 2月2日24時 (成績登録締め切りが10日で、近藤が6〜9日出張のため3日に採点作業を行います)
【連 絡 先】 kondoh(at)faculty.chiba-u.jp (atは@に変えてください)
追加資料
ここでは課題に対する全体的なコメントを記述します。
ハザードとディザスター
●自然災害分野においてハザードは誘因、外力と訳され、災害を引き起こす可能性のある自然現象です。ディザスターはハザードのより被害が出た事象ということで良いでしょう。重要なことはハザードをディザスターにしないやり方があるということです。そのための知恵を学びましょう。
●課題の回答を見ていると、“私は〜思う”という形式の回答がありました。大学では“私は〜考える。なぜなら〜だからである”という形式で記述することを試みましょう。
●また、世間でどのような認識にあるか、ということを調べておくことも大切です。その上で、自身の考え方を提示することも大切なことです。
流域治水
● 皆さんの考え方を読ませて頂きました。水害を“わがこと化”して考えるきっかけになったかなと思い、少しうれしくなりました。
●流域治水には琵琶湖から始まる環境社会学系の系譜と、総合治水から始まる工学系の系譜があると思います。流域治水には様々な考え方がありますが、二つの系譜が出会うところに一つの収束点があるのではないかと思います。
●水害を実際に体験した人もいました。ただし、自分の経験に加えて、水害の事前・事中・事後を記録した歴史も同時に学ぶとさらに自分の考え方、態度を強固なものにすることができるでしょう。経験と歴史の両方から学ぶことが大切です。
●上流・下流問題に気がついた方もいました。自分の安全が、誰のどんな努力や犠牲によって担保されているのか。そのことに気づくことから出発し、流域全体で合意を得るためにはどうすれば良いか、考え続けてください。解は一つではありません。解よりも解法を考えることが大切かも知れません。
●流域治水を達成するためには、理工系の知だけではなく、人社系の知も必要。さらに自然観、社会観、人間観、といった“観”も大切だと思います。縮退の局面に入った日本を成熟の方向に導くためには、総合的、包括的な視座、視点、視野で問題に取り組む必要があります。大学で学ぶ意味もここにあると思います。
情報
球磨川水害の後、中止された川辺川ダム計画が再び検討されています。現場の真実はどうだったのか。人は川とどう付き合おうとしているのか。考えてください。
日本人の自然観はどう変わってきたのか。2013年現在、「自然に従う」という人が約半分です。「自然を征服する」は1973年に減っていますが、第一次オイルショックの年でした。 1992年の地球サミット(国連環境開発会議)の頃から「自然に従う」がトップに躍り出ています。表には年齢や性別、地域ごとの結果もあります。あなたはどう読み解きますか。
農水省の「新しい農村政策の在り方に関する検討会」、「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」は 令和3年6月4日に共同で中間とりまとめを出しています。この中には流域治水やカーボン・ニュートラルに対する言及もあります。特定の問題を解決するためには、全体最適化の中で、個々の課題に対応するというシステム思考が大切になってきたように思います。
政治が混沌としても、各省庁ではきちんと政策に関する検討が進められています。省庁のホームページはたくさんの情報がありますので、ぜひアクセスしてください。キーワードにはこんなものがあります。「国土形成計画」、「環境基本計画」、「社会資本整備重点計画」、「食料・農業・農村基本計画」、等々たくさんあります。積極的に情報をサーチする習慣を身につけましょう。
地形図・空中写真・主題図を閲覧、ダウンロードできるサイト
実体視の練習
下の3枚の画像は2009年に撮影された広島市安佐南区の連続する3枚の空中写真です。 これをクリックしてダウンロードし、実体視してみよう。
実体視はできたでしょうか。古今書院「応用地形セミナー」から実体視の方法と練習用の口絵ページを採録しました。ここをクリックして練習に使ってください。可能な限りご購入頂ければ幸いにございます。
旧版地形図の検索と購入
事後課題
広島市安佐南区の最新の空中写真(上記の写真利用可)と米軍写真(1947、1948年)をダウンロードし、実体視して、山林の状況、土地利用のあり方を記述してみよう。 ⇒実体視の方法はここを参考にしてください。
本日紹介した書籍(2019年度講義で紹介しました)
その他、「富士覚醒」、「震災列島」もおもしろい。小説ですが、科学的知見に基づいているので現実感がある。
古今書院では本書以外にも空中写真判読や災害に関する多数の書籍あり。特に、災害履歴に関する書籍は、災害をわがこと化するために大変役に立つ。
第2話:水害 2019年10月の千葉県の水害に関する報告も参照してください。
水害に関する最近のトピックに「流域治水」があります。明治に採用した西洋式治水、すなわち 水は堤防の外に閉じ込め、一滴たりとも都市には入れないという施策の限界が、河川近傍への人口集中、気候変動の顕在化によって見えてきたということです。しかし、流域治水に対する考え方は様々です。それは、流域治水の方法がまだ模索中であることと同時に、水害が地域の事象であり、地域ごとに対応を考えなければならないということでもあります。普遍的な素晴らしい方法によって問題を解決するという前世紀の習慣が変わりつつあるともいえるでしょう。「流域治水」のキーワードで調べてみてください。
嘉田ほか(2010)は流域治水を政策に取り入れた滋賀県のポジションペーパーともいうべき論文です。論文を読むことに挑戦してみてください。滋賀県は流域治水に至るまで嘉田前知事の30年以上に及ぶ営みがありました。そんな話もしてみようと思います。
日本には「総合治水」と呼ばれる政策が数十年前からありました。しかし、行政の縦割り、上流・下流問題といった初版の事情により達成することができませんでしたが、「流域治水」として実現の可能性が見えてきました。水文学の碩学である虫明功臣先生のお話を聞くことができます。WEBサイトから参加登録をしよう。Youtube配信されます。
ここから地形図を参照することができます。地域の話を聞いたら、まず地形図で地形や土地利用を確認してみよう。土地条件図などの主題図も見ることができます。また、災害情報は防災・災害対応のページを見てください。そこから地理院地図に個別の情報を表示することができます。
国土交通省ハザードマップポータルサイト J-SHIS 地震ハザードステーション
あなたにとって大切な町の洪水ハザードマップを見てみましょう。
ここに演習資料がありますので参考にしてください。静岡大学防災総合センター「地理学演習」。
事後課題(ここはオンデマンド対応です)
地図をダウンロード(画像をクリックして表示、保存)して、下記の問いに答えなさい。迅速測図の図式はここを参照してください。
ヒント:自然堤防は畑(白抜き)を抽出、残りは後背湿地
ヒント:沖積低地におけるどんな地形に沿って洪水は流れ、湛水するか。
迅速測図(明治15年) | 1:2.5万分の1地形図(平成) |
滑川の土石流 土石流の特徴を理解しましょう。
事後課題(オンデマンド対応)
西湖周辺の1:25,000地形図と1975年撮影の空中写真を用意しました。右クリックで「対象をファイルに保存」、あるいはクリックして表示させてから右クリック「名前をつけて画像を保存」、でダウンロードできます。
現在の根場集落は富士山の溶岩台地の末端に位置していますが、災害時は本沢川下流の沖積錐の上に位置していました。土石流災害を受けた根場、西湖地区の地形の特徴を地形図と空中写真を見ながら記述してみましょう。
空中写真の判読によって作成された地すべり地形分布図です。すべてが活動しているわけではなく、長期間活動を停止している地すべりもあります。でも、地震発生時には活動を再開する地すべりもたくさんありました。
事後課題(オンデマンド対応)
(2017年改訂)「松之山大地すべり」は2014年に発生50年を迎え、新潟県十日町市では記念誌を作成しました。簡単に読める内容ですの、PDFをダウンロードし、下にある地形図と対比させながら読んでください。
(旧版)新潟県松之山温泉の背後には「松之山地すべり」が存在しており、1962年から1964年にかけて変動が活発化し、地すべり対策工事が施されています。松之山温泉、良いところですね。温泉に浸かってまったりしたいものです。
資料1:地形図
1:25,000地形図松之山温泉 | 地すべり部分の拡大 |
資料2:空中写真(1976年撮影)
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それでは、地形図と空中写真を参照して、松之山地すべりの地形、土地利用の特徴を記述してください。ここに、専門家による地すべり判読図を置きますので参考にしてください。地すべりブロックの範囲、滑落崖、凹地、池、等の情報が記載されています。
なお、松之山地すべりの西隣にも地すべり地形がありますが、下端を河川に侵食されているので、古い時代に動いて、現在は安定していることを意味しています。
地震に関するリンク
中には研究を主体として活動している組織もあります。地震のメカニズムを知ることも重要ですが、必ずやってくる地震を受け入れて、暮らし、町づくりを考え直すことも大切ではないでしょうか。
事後課題−災害史について調べる(オンデマンド対応)
みなさんが住んでいる地域の過去の災害について行政や地元の有志がとりまとめた災害史があるかどうか、調べましょう。過去の地震災害をひとつ取り上げて、ハザード(地震)の特徴、災害に至る経緯、災害となった素因、などについて簡単に纏めてみよう!
【行政が纏めた災害史の例】
こんな情報を探して、読んでみよう!
皆さんの関心地域の津波ハザードマップを見てみよう。
事後課題−津波ハザードマップを読む(オンデマンド対応)
関心地域の津波ハザードマップを閲覧し、想定浸水域を確認したら、その場所の土地利用、公共施設の配置、道路網、等を確認し、地震発生時の対応について考えてみよう。 地図は国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスから参照できます。
事後課題(オンデマンド対応)
・江戸時代以降は噴火の記録が残りやすいのですが、それ以前に大噴火を起こした地質学的、考古学的な記録、伝説が残されている火山がたくさんあります。そのような火山を探して、どのような事変が起きたのか調べてみましょう。
・例えば、古墳時代から平安時代にかけて噴火した火山には十和田火山、榛名火山があり、富士山も噴火していますね。その時、何が起こったのでしょうか。
・遙か遠い過去の噴火記録を探して、身近にある火山が活火山であることを意識してください。
国土地理院が作成した主題図や空中写真を同じ画面で閲覧することができる。
日本地理学会災害対応委員会による災害緊急速報が得られます。
事後課題(オンデマンド対応)
これまでに自然の営みと人の営みの相克である災害について学んできました。人と自然は共生することはできるのでしょうか。君たちが考える人と自然の良好な関係のあり方について聞かせてください。
その答えは一つではありません。まず自分自身の考え方を持ち、人の考え方も尊重し、折り合いをつけていく方法を考えてください。
人の考え方を理解しようとする際には、その人の“世界”の範囲を考えると良い。“世界”とは、その人が関係性を持っている範囲で構成される。自分の世界と人の世界がどう交わるのか(あるいは交わらないのか)、これを考えると人の考え方が理解でき、折り合いの付け方も見えてくるかも知れません。
第9話:原子力災害(付録)
2014年9月7日日本学術会議公開シンポジウム「東日本大震災を教訓とした安全安心で持続可能な社会の形成に向けて」で講演した資料です。その他の資料は下記のURLを参照してください。
中・長期の災害看護の課題が福島にあると思います。原子力災害については、遠くにいて頭で考えるのではなく、現場に身を置いて感じながら対応を考える必要があります。とはいえ、なかなか現場には入れないでしょうが、放射能汚染の実態については科学の成果を理解する態度を持ち、避難者の暮らしについては、なるべく「わがこと化」して考えるように努力してほしいと思います。
2016年12月1日追加資料