第7話 海岸 ------------------------------------------------------------------------------- 【課題】 提出期限:7月31日(近藤宛メールで提出) (1)Google EarthあるいはGoogle Map等で海岸線を見てください。どこでも良いですよ。 ・コンクリート護岸、ヘッドランド(人工岬)、離岸堤といった海岸を守る仕組みが見えると思います。 ・それは侵食防止の機能を持っていますが、その原因についてマップを見ながら考えてください。 (2)「海岸」の章に関する質問を書いてください。 ------------------------------------------------------------------------------- ●「私は〜思う」ではなく、「私は〜考える。なぜなら〜だからである」とする。 ・この講義は終わってしまいますが、課題は、上記のような形式で書くことを心がけてください。新型コロナに関する世の有様を見てください。「私は〜思う」だけで主張をぶつける態度が世間を混乱させているように見えます。それを「私は〜考える」に改めるように努力しましょう。ただし、「なぜなら〜だから」は難しいかも知れません。とはいえ、コロナウィルスの性質、それを世界に拡散させたメカニズムはわかると思います。それに基づき、自分の考え方を決めて、行動してください。 ・日本は良い社会になりました。国民の安全・安心に関わることはみな行政がやってくれます。警察、消防、医療、福祉、自衛隊、教育、...。その結果、日本人は指示されないと自分では行動できない人が増えているように感じます。自律的に行動売る習慣を身に付けてください。 ●九十九里浜の侵食、堆積のメカニズム ・スライドの19番目をしっかり見てください。右下の図が参考になります。九十九里浜の海岸線は南北の屏風ヶ浦と太東崎から運ばれてくる砂によって概計が形成されました。その漂砂が止まると南北で侵食モード、中央で堆積モードになります。 ・まず、既存の知識を調べ、理解すること。それでもわからないことがあったら、仮説を立てて検証するという作業を繰り返す必要があります。この習慣を身に付けてください。 ●海岸侵食の原因 ・まず、個々の海岸で発生している侵食には地域固有の原因があることを理解しましょう。例えば、九十九里浜では上記の様に、離れた場所の侵食防止工が侵食(および堆積)の原因になっています。一般論だけではなく、地域固有の理由があり、それを理解することは地理学の目的の一つです。 ・河川が土砂を運ばなくなった原因は何でしょう。一般論ではダムや河川工事で土砂が止められてしまったという説明があります。それも間違いではありませんが、一般論に囚われすぎると本質を見誤ることがあるかも知れません。 ・川が土砂を運ばなくなった重要な理由に、日本の森林が成熟したことがあります。江戸時代には山は今より荒れていました。東海道五十三次の版画をよく見ると山には木があまりありません。そんな状況だから、侵食が起こり、川が土砂を海に流したため、江戸時代の砂浜海岸では砂丘の形成、季節風による飛砂が農業に対する大問題でした。だから、海岸沿いの藩は砂丘に黒松を植栽し、飛砂を止めることにより農業生産性を向上させる努力をしていました。 ●護岸のサンゴ礁への影響 ・もちろん大きな影響があります。サンゴは生物ですので、コンクリート護岸で覆われると当然、死滅してしまいます。辺野古の埋め立てを思い描いていると思いますが、国の事情、地域の事情、自然の事情、何が大切か、という難しい課題になります。たくさん情報を集めて、あなた自身の考え方を持ってください。それが生き様に繋がります。 ・なお、ヘッドランドは人工岬の意味で、砂浜海岸の侵食防止工です。 ●離岸堤の効果 ・海岸線と平行に離岸堤が設置されると、その陸側に砂が堆積しやすくなるという効果があります。うまくいっている事例も探すことができると思います。 ●潮だまり ・これは潮の満ち引きの干潮時に取り残された水体ですね。昔、東京湾の干潟で遊んだときに、小さな水たまりにカレイが取り残されているのを良く見ました。 ・また、磯浜海岸(岩石海岸)では海食台が干潮時に離水すると大きな水たまりが残されることがあります。そこにはウミウシなど、たくさんの生物を見ることができると思います。磯遊びの醍醐味ですね。 ●ウミガメが産卵しやすい海岸 ・これは日本でも至るところにあります。九十九里浜もその一つです。海から緩やかに浜に至る砂浜海岸が残っていないとウミガメは産卵することができません。海岸侵食や護岸はウミガメの生存に対する脅威です。 ・また、砂中に産卵された卵を保護するために、砂浜の自動車やバイクの走行は控えてほしいものです。 ●潮干狩りが盛んなところの特徴 ・それはズバリ干潟であること。ただし、東京湾岸では埋め立てにより、干潟は少なくなってしまいました。 ・これは世界でも同様です。様々な生態系サービス(自然の恵み)を持つ干潟を守っていきたいものです。 ●東京湾の魚介は大丈夫か ・高度経済成長期には人間活動により東京湾は汚染されてしまいました。当然魚介類も汚染されたと思われますが、今では東京湾の水も大分きれいになりました。私たちは東京湾の恵みを存分に受け取ることができます。 ・でも、昔の記憶も忘れないようにしましょう。熊本県水俣では有機水銀で汚染された魚を食べることにより、水俣病が発生し、その苦しみは今でも続いています。新潟県阿賀野川流域でも川魚を通じて新潟水俣病が発生しました。四日市の大気汚染問題も最初は魚介類の異変から始まりました。その苦しみを乗り越えて、私たちは海の恵みを享受することができるのです。二度と汚染を起こしてはいけません。