第5話 平野 ------------------------------------------------------------------------------- 【課題】 提出期限:7月10日(近藤宛メールで提出) (1)「今昔マップ」の使い方は慣れたと思います。今回は「地理院地図」も使いましょう。そこで、都市化された地域をひとつ選択し、昔の地形を判読してください。  今昔マップのURL http://ktgis.net/kjmapw/  今昔マップで物井にある敬愛短大を見ると、グランドは昔の水田であることがわかります。短大の校舎はどんな土地に建っているのでしょうか。旧版地図でみると、沖積低地の縁であるように見えます。それとも台地の上でしょうか。  そこで、「地理院地図」の登場です。選択中の地図を「標準地図」にして、物井付近を表示します。  地図の種類で、標高・土地の凹凸を選択し、陰影起伏図をクリックすると、土地の高さがわかります。  地理院地図のURL https://maps.gsi.go.jp/  敬愛短大の校舎は台地の下にありましたね。メニューのツールから断面図を選択し、始点と終点を指定すると断面図が出ます。現在は河川改修が進んで浸水の危険性は少ないと思われますが、自然状態だったら鹿島川の氾濫で浸水してもおかしくない場所であることがわかります。  明治時代の庚戌(かのえいぬ)の洪水では鹿島川の平野が広範囲に浸水しました。下記のページを参照してください。  https://www.pref.chiba.lg.jp/bousai/bousaishi/husuigai.html  そんなことをいったら物井の山王一丁目の中多雨はやばいんじゃないと思うかも知れません。東関東自動車道の北側、鹿島川に沿って調整池があります。鹿島川の水位が上がったときは、この調整池に水を流入させ、最高水位を低下させて、地域を守っています。  平穏な暮らしの陰には、こんな施設があるのです。その建設と運営は皆さんの税金で賄われています。  では、平野の地形を調べてください。 (2)「平野」の章に関する質問を書いてください。 ------------------------------------------------------------------------------- ●敬愛短大の土地条件 ・今昔マップによると、敬愛短大は低地(水田)と台地の間にあるように見えます。地理院地図を見ると、背後の台地の崖端の下にあることがわかります。よって、敬愛短大は低地にあると判断できます。 ・地理院地図で断面図を描くと、道路を挟んで反対側の小学校は標高が高くなっていますので、おそらく土盛りを行っています。低地利用の基本です。 ・また、山王一丁目っも大分土盛りをしているように見えます。相対的に短大の敷地が低くなっていますね。 ●土肥町を観察して頂きました⇒みなさんもWEB上で訪問してみてください。 ・国交省ハザードマップポータルの重ねるハザードマップを見ると、洪水ハザードマップはないようです。流域が小さく、河川改修も行われているため、さしあたってのリスクは少ないと認識されているのかも知れません。 ・津波、土砂災害ハザードマップはあります。津波では最大10m程度の浸水深が想定されています。東海、東南海、南海地震はいずれ発生しますので、最大限の警戒が必要です。 ・今昔マップで明治期の地図をみると、低地は水田で市街地は山側に張り付いています。当時は稲作が重要な生業であったのでしょう。 ・現在は水田だった場所が開発されて住宅地になっています。漁業や観光を主な収入減として、米は買うような生活様式に変わったのかも知れません。 ●埼玉県東部、中川低地 ・現在では都市化が進み、首都圏のベッドタウンとしても利用されています。 ・この地域を語るには利根川、荒川の氾濫原としての性質を知る必要があります。川は変遷しながら沖積低地を形成します。その場が中川低地だったのです。 ・古利根川の名前からもわかりますが、かつて利根川は何度も河道を変遷しています。それは洪水だけではなく、人の手による変遷もありました(代表的なものが利根川東遷)。荒川も同様です。 ・この地域は水害常襲域であり、水塚(濃尾平野では水屋といいます)をはじめとする水害に対する備えがありました。江戸時代の遊水池や堤防も残っています。 ・現在は安全になったように見えますが、それは堤防の増強、遊水池(たとえば渡良瀬遊水池)の建設、上流のダムの建設等によって守られているからです。 ・首都圏外郭放水路はぜひ調べてください(WEBで検索)。  下記は江戸川河川事務所のホームページから引用。 「都圏外郭放水路は、洪水を防ぐために建設された世界最大級の地下放水路です。中川、倉松川、大落古利根川、18号水路、幸松川といった中小河川が洪水となった時、洪水の一部をゆとりのある江戸川へと流すことができます。 中川・綾瀬川の流域は、利根川や江戸川、荒川といった大きな川に囲まれています。この地域は、土地が低く水がたまりやすいお皿のような地形となっているため、これまで何度も洪水被害を受けてきました。また、川の勾配が緩やかで、水が海まで流れにくいという特徴があり、大雨が降ると水位がなかなか下がりません。さらに近年では、都市化が急速に進み、降った雨が地中にしみこみにくく、雨水が一気に川に流れ込んで洪水が発生しやすくなっています。 首都圏外郭放水路の完成によって、周辺地域で浸水する家屋の戸数や面積は大幅に減り、長年洪水に悩まされてきた流域の被害を大きく軽減しました。} ・中川低地における暮らしは守られているといえます。そのことを地域の住民は理解しているでしょうか(もちろん理解していると思います)。暮らしの安全・安心はたくさんの努力、コストによって維持されているのです。そのコストは税金です。 ・でも、永久にコストを負担することは可能でしょうか。 ●カスリーン台風 ・かつて東京下町低地は浸水被害に遭ったことがあります。実は何度もあったのですが、カスリーン台風による被害が最後の水害でした。WEBで調べてください。 ・おなじことは将来起きるのか、起こらないのか。こう問われたら、起きる、と答えざるを得ません。東京下町低地の土地条件はどうなのか、現在どのような施策を行っているのか、調べてください。 ・江戸川区のハザードマップには「そこにいてはダメです」と書いてあります。では、どうすれば良いか。まず自分で考えること。行政に丸投げはもうできません。待っている間に死んでしまいます。 ●海岸平野 ・海岸沿いの平野で、成因には複数あります。海岸の章で学びます。 ・千葉県ですと九十九里平野が代表です。 ●台地と平野 ・実は関東平野は平野といっても大半は台地で構成されています。成因を伝えるには沖積低地が適切だと思われます。沖積低地は約1万年前に終わった氷期の後、海水準が上昇する過程で、河川や海の作用により埋積されてできた低地です。地盤が未固結であることによるハザード(地震の震動大、液状化、など)や、低地がまだ形成中であり、その営力は洪水であることから発生する水害にあいやすいという特徴があります。 ・台地というのはかつての沖積平野が地盤変動や海水準変動により離水して、新規の侵食作用により台地となったものです。河岸河岸段丘は低地と台地の中間にあり、大規模な出水の時には浸水することがあります。 ●調整池 ・ユーカリが丘には6カ所あるとのことでした。ニュータウンや団地を造成する際には必ず調整池を設けなければなりません。それは地表をアスファルトやコンクリートで覆うことにより、都市型洪水が発生し、下流の治水安全度が下がるからです。 ・ユーカリが丘では50年に1度の大雨にも耐えられるとのことですが、どの位の降水量でしょうか。実は確率雨量は場所によって異なります。その地域の降雨量の統計値を使って、50年に1度の確率で降る降雨量を計算するのです。 ・最近、雨の降り方が変わっています。それが地球温暖化によるものかどうかはわかっていませんが、計画時に決めた計画最大の降雨量を上回る可能性も否定できません。その時、私たちはどうしたらよいのでしょうか。これは社会のあり方とも関わる重要な課題です。 ●旧水田は液状化しやすいか ・一般的にはそういって良いでしょう。 ・液状化は粒径の揃った砂が水で飽和されている場所で発生しやすいという性質があります。 ・水田のある沖積低地が砂でできているとは一概にはいえず、地域の特徴を考慮する必要があります。 ・沖積低地は川が作った地形ですので、かつての河道(旧河道)の堆積物が地下に埋積されていることがあります。下総台地は砂で構成されていますので、川は砂をたくさん運んでいます。郊外の谷津に行くと、カ所には河床は砂であることがわかるでしょう。 ・先日、市川市の大町公園に行きましたが、水流部分の河床は砂でした。 ・砂が沖積低地の地下に存在する場所では、液状化が起きやすいといえます。 ・直近では2011年3月11日の東北太平洋地震で千葉県内の各所で液状化が発生しました。その記録は残されていますので、過去の液状化発生履歴を知ることで、発生のしやすさを知ることができるでしょう。 ・なお、千葉県のホームページでは地域ごとに液状化ハザードマップを作成し、公開しているので参照してください。