第4話 台地と丘陵 ------------------------------------------------------------------------------- 【課題】 提出期限:6月26日(近藤宛メールで提出) (1)千葉県の下総台地上にはたくさんの住宅団地があります。一面に地表を覆う住宅を見ていると元の地形がわからなくなります。そこで、「今昔マップ」というオームページを使って、お目当ての団地の元の地形を見て、考えたことを記述してください。 今昔マップのURL http://ktgis.net/kjmapw/  例えば、勝田台やユーカリが丘付近を見ると、街の中の思いもかけなかった場所が谷津だったことがわかると思います。操作がわからなかったらメールください。 (2)「台地と丘陵」の章に関する質問を書いてください。 ------------------------------------------------------------------------------- ●東京ディズニーリゾート ・浦安は教科書の海岸の章にも登場しますので、合わせて勉強してください。浦安といったら東日本大震災では液状化で有名になりました。でも、液状化は神奈川から千葉県の東京湾沿いの干潟、埋立地の広い範囲で発生しました。報道では浦安が有名になりましたが、被災者の立場で考えるとどうでしょう。ここでも起きているのだよ、と訴えたくなりますね。これを共感(エンパシー)といいます。シンパシーとは異なり、「他者の立場を想像して、理解しようとする自発的で知的な作業」(ブレイディーみかこ氏による)と定義されています。これからの時代はエンパシーが重要な役割を果たすようになると思います。 ・311の時、ディズニーランドは液状化の大きな被害はありませんでした。それは1995年の阪神大震災の教訓を活かし、液状化に備えたからだと思います。液状化は地盤改良等の技術で被害を軽減させることができます。しかし、ディズニーランドの駐車場は凸凹になっていましたね。おそらく、対策と復旧のコストを考えたのでしょう。 ●八千代市の工業団地 ・あの辺りは昔は針葉樹林だったことを判読して頂きました。おそらく針葉樹林というのは黒松の植林だと思います。松は燃料としても優秀ですし、疎林にしておけば林床に草が生え、馬が食べます。下総台地はかつては牧として広く利用されていました。高根木戸といった地名にも名残があります。木戸というのは馬を放牧するための野馬土手に設けられた出入り口のことです。ところどころに野馬土手も残っています。 ・かつての谷津が今はどなっているかも今昔マップで調べてください。盛り土地はあるだろうか。ただし、盛り土だからと言って危険というわけではありません。きちんとメンテナンスされていれば安全に暮らすことができます。 ●ゴルフ場の地形改変 ・良いところに気が付きました。ゴルフ場はもともとイギリスの起伏の大きくない波丘地で発祥したスポーツです。日本の山地、丘陵地では起伏があるので、盛り土、切り土で造成されたゴルフ場はたくさんあります。そんな場所では確かに盛り土地のすべりが発生しているところがあります。私も学生時代に地盤調査のアルバイトをしたことがあります。 ・生態系への影響はあるのではないか。その通りです。ただし、ゴルフ場は生態学的には草原ですので、生物多様性が増えたという事例もあります。場所によって異なる様々な影響があります。 ・最近は不況で潰れるゴルフ場も出てきていますが、山地斜面で果樹園に転換したという話も聞いたことがあります。いずれにせよ、色々な場合があるということです。でも、色々な場合があることを知っているということ、それは地理学的知識ですが、それが地域における課題解決に役立つのです。 ●東京新田 ・下総台地の歴史について調べて頂きました。職を失った士族による開墾は良く調べてくれました。この士族による開墾は結局失敗しています。やはり元士族には過酷な農作業は厳しかった様です。さらに、明治政府は開墾事業を大商人に委託しましたが、地租改正のインサイダー情報を得て、土地の囲い込みに走ったことで、事業がうまくいかなかったという歴史もあるようです。この時の開拓地は東京新田と呼ばれていましたが、入植した方々の窮状を聞いて、田中正造が帝国議会で質問をしています。田中正造は知っていますか。日本の公害運動の草分けです。是非とも覚えておいてください。 ●地盤沈下と地盤沈降 ・この二つは別の現象を表しますが、同時に起きることもあり、混同されて使われていることに注意してください。地盤沈下は未固結の地層から地下水や天然ガスをくみ出すことによって水圧が低下して、地層が収縮する現象です。液状化によっても水が吹き上がるために、地盤は収縮し、地盤沈下が起きます。東日本大震災の時に太平洋沿岸の広い地域で沈降が起きましたが、これは地震に伴うもので、プレートのテクトニックな動きに起因します。地盤沈下のスピードはテクトニックな沈降と比較して格段に大きいことが特徴です。 ●地球温暖化と地域温暖化 ・地球温暖化は温室効果ガスの放出によって大気が暖められる現象であり、地球上の場所によって温暖化の程度は異なります。地域温暖化は人間による開発によって土地の性質が変わり、暖められやすくなることです。現象としてはヒートアイランドと言います。ヒートアイランドによる気温上昇は地球温暖化よりも大きいことが特徴です。気温の観測点は都市域に多いため、地球温暖化とされている気温上昇はほとんどがヒートアイランドによるものであるという考え方もあります。土地の使い方は現世代の生き様を現しています。未来に責任を持つためには、土地の使い方を考えて行かなければなりません。 ●自然を補うこと ・自然を変え、環境を変えてしまったのは人間の仕業です。だから、失われた自然を補い、自然と共生することが大切。その通りだと思います。私もそうありたいと思います。でも、人が生きていくということは、必ず自然の改変を伴います。人が暮らすためには、少しの自然の改変は許してもらわなければなりません。どんな、どの程度の折り合いを付けるのか。これは私たちの生き方にも繋がります。考え続けてほしいと思います。自然を保全する活動に必ず関わることができます。 ●四街道と軍隊 ・今でも自衛隊があるでしょう。明治時代には軍の教育機関があったとのことですが、広大な土地が広がっていたので演習に適していたのでしょう。敬愛大学周辺は昔は鉄道連隊がありました。海外に展開するときに物資を運搬する鉄道を建設する演習を下総台地で行っていました。穴川から花見川団地を経て津田沼に至る道路は昔、狭軌の軌道がありました。そこで走っていた蒸気機関車は津田沼のヨーカ堂の前の公園に展示されています。新京成も元は鉄道連隊の軌道だったと聞いています。だからくにゃくにゃ曲がっているわけです。日本は明治を迎えるにあたって、軍事国家として列強と対峙するか、豊かな小国となるか、決断を迫られましたが、当時としては軍事国家を選択するしかなかったのでしょう。しかし、その結果は皆さんご存じの通りです。現代社会では戦争は争いの解決方法にはなり得ません。人間ですので、賢い解決方法を考えたいと思います。 ●台地と津波 ・台地は一般に斜面で低地と接しており、海岸からの距離も一定程度あることが多いので、津波の被害は想定しにくいと思います。ただし、斜面が海食崖として海に接し、想定津波高が数10mといった場合には想定した方が良いでしょう。 ・重要なことは、地形図を見て判断するということです。海がどこにあり、海からどれだけ離れていて、途中に標高差がどれだけあるか。これがわかれば頭の中で津波被害があるかどうか想像することができると思います。 ・台地ではありませんが、海岸平野でも自然堤防といった微高地は津波の被害がないか、軽減されることもあります。地形図をみれば微高地かどうかはわかりますが、古い神社やお寺の存在が津波に対する強さを現す場合があります。津波の被害がなかった場所に寺社がまつられたというわけです。その他、災害の伝承碑の存在も重要です。 ●台地では液状化が起きにくいか ・一般に台地の上では起きにくいといって良いと思います。それは台地の形成が低地よりも古く、固結が進んでいるからです。ただし、台地面を流れる河川が沖積低地を形成している場合は液状化が起きる可能性もあります。 ・私の自宅は東京湾と利根川水系の分水界にあたる標高26mの場所にあります(習志野高校の近く)。うちは絶対津波はこないのですが(もし来たら、それは東京湾岸の都市域が壊滅していることを意味します)、少し北側に浅い皿状の谷があり(高津川となり大和田で花見川に合流します)、そこは昔湿地でした。江戸時代に駒止の池という沼があり、若い男女の悲劇の伝説が残っています。ここを習志野市のハザードマップでみると、液状化の可能性はあることになっています。