第2回 火山 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 【課題】 提出期限:5月29日(近藤宛メールで提出) (1)火山には災いと恵みの二つの側面がある。火山の恵みについて教科書を参考にして纏め、あなたの暮らしとの関係性について記述してください。教科書に書かれているもの以外にも自分で調べて気が付いたものがあったら書いてください。下記の説明では、富士山の水資源とトイレの必需品について書いてありますね。 (2)火山の章に関する質問事項を送ってください。回答のページを作ります。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ◇質問に対する回答(キーワードはWEB検索で調べてください) ●火山災害の恐れのある地域はどこか ・地形を見て火山だとわかる火山は活動中の若い火山です。その近傍では火山活動に伴う災害に委細する可能性はあります。 ・ただし、溶岩流、火砕流、火山灰、火山性地震、といった現象により、火山近傍でも災害に遭う可能性のある範囲は異なります。 ・火山の噴煙により日射が遮られて、地球全体が寒冷になることがあります。これは地球全体が影響を受ける範囲になります。 ・巨大カルデラ火山のような巨大噴火ではその影響範囲も広くなります。日本の半分くらいが被災するかも知れませんが、その時は日本という国の政治システムが機能しなくなったら、それは日本全体の問題になります。 ●火山噴出物からの年代測定法 ・一般に年代測定は有機物に含まれる炭素14法等の放射性同位体を使って計測することができます。よって、火山灰の上位あるいは下位の地層に含まれる木片等の有機物の年代を測定することによって、火山灰の年代を決定することができます。 ・火山灰は広域を覆いますが、それは同じ時間面を表していることになります。ひとつの地点では、たくさんの給源火山からの噴出物が折り重なって見えますが、その中に年代がわかっている火山灰があると、間に挟まれた年代不詳の火山灰の噴出年代がわかることがあります。日本には火山がたくさんあるので、丁寧に火山灰を観察することによって年代を決めているのです。 ・また、歴史時代の噴火では記録が残っていることがあるので、その情報も活用することができます。 ●日本はて鉱物資源には恵まれているように感じるが、実際には産出量が少ないのはなぜか。 ・日本には火山がたくさんあり、地下深所から持ち上げられた鉱物資源を産出する鉱山はたくさんあります。しかし、残念なことに規模が小さいため、次第に廃鉱になってしまいました。 ・また、海外の大規模鉱山で低コストで生産、出荷できると国内産は太刀打ちできないという事情もあります。 ・さらに、公害が廃鉱を促した場合もあるでしょう。神岡鉱山を調べてください。 ●活火山の周囲にも人の暮らしがあるのはなぜか。 ・温泉、景観以外にも火山由来、あるいは火山が形成する地形、土壌が特産品を形成する場合もあるでしょう。しかし、火山災害の再来周期は人生よりも遙かに長く、何よりもそこがふるさとだからだと思います。 ・火山の存在を諒解して、火山とともに暮らすという精神的習慣は尊重したいと思います。 ●火山は突然形成されることはあるか。 ・火成活動の素因がある場所ならば、あるといえます。 ・教科書にも出てきた単成火山は極めて短時間の噴火活動で形成されたと考えられます。 ・昭和新山は短期間の形成の過程が克明に記録されています。調べて見ましょう。 ●火山と地層は関係があるか。 ・噴火によって火山自体が形成する地層があります。伊豆大島の「地層大切断面」は伊豆大島ジオパークの見所のひとつです。阿蘇火山の外輪山に経つと、地層の延長が空中に向かって伸びている様子が想像できます。 ・地層は一般に堆積物を意味しますが、火山灰も地層の一種ですので、大いに関係があるといえます。 ●火山は海に多いというが本当か。 ・本当です。GoogleEarthで日本近海の海底をみると、たくさんの火山を見つけることができます。もちろん、現在活動は行っていません。 ・海洋底にはホットスポットと呼ばれるマントルから熱が供給されている場所があります。そこに火山が形成されますが、その火山はいずれプレートの動きとともに海溝に向かって遙かな旅に出ます。 ・ハワイを見てください。現在のハワイ島がホットスポット上で活動する火山で、そこから北西方向に延々と火山列が伸びているのが見えます。 ・南太平洋にも火山と元の火山がたくさんありますね。一部は環礁、裾礁と呼ばれるサンゴ礁の形成と関係があります。 -------- ☆下記の記述は概ね、PDF資料の順番通りになっています。PDFを参照しながら読んでください。書き下ろしなので、まだ不十分な点もありますが、少しずつ修正していきます。 ●まず教科書の第一章をじっくり読み込んでください。基礎的なことは高校で学んでいると思います。 ●要点は、火山には災いだけでなく、恵みもある。我々はどちらも受け入れながら暮らしているということです。カバーフォトの大谷川には堰堤が何段か見えます。なぜ?遠くに見えるのは日光火山。火山の山体は非常に脆く、常に侵食されて大量の土砂を生産しています。だから下流の河川は洪水時には土砂を大量に運び、荒れ川、暴れ川になります。 ●火山の分布には規則性があります。地理学ではランダムではない分布には意味があると考えます。そこで、いろいろな地図(主題図)を重ね合わせて関係性を探そうとします(これは地理情報システム(GIS)で作業することができます)。火山体の分布と国立公園の分布は似ています。ということは? ●火山の自然: 教科書をよく読んで火山がそこにある理由を学んでください。存在にはみんな理由があるのです。あなたがそこにいることにも意味があるのです(哲学的ですが)。キーワードはプレートテクトニクス、火山フロント。 ●噴火の様式には爆発的な噴火と穏やかな噴火があります。爆発的な噴火を起こす火山は安山岩質・流紋岩質溶岩を噴出する火山です。日本では1990年代前半に活動した雲仙普賢岳が有名です。  穏やかな噴火は玄武岩質溶岩を噴出する火山です。ハワイが有名ですね。日本では伊豆半島に玄武岩質溶岩が形成する柱状節理が観光地になっています。  ところで、星の王子さまの火山は安山岩質溶岩を噴出する様です。読んでみよう。 ●雲仙普賢岳をGoogleMapかGoogleEarthで表示指しながら図1-4の地形分類図と対比させてみよう。溶岩ドーム、火砕流・土石流の流下した痕跡、山体が開析されて形成された山麓扇状地が見えますか。地形分類図の判読も少しずつ行えるようにしましょう。 ●雲仙普賢岳の火砕流では多数の犠牲者が出てしまいました。火砕流の動画をYoutubeで見ることができます。探して見てください。また、災害記念館のホームページのリンクを参考情報に入れておきました。 ●ハワイのキラウエアとマウナロアの写真を紹介します。お皿状の火山であることがわかります。それは粘性の高い玄武岩質溶岩を噴出するからです。キラウエアの噴火の様子はWEBで検索して見てください。 ●火山の一生は、たくさんの火山を研究者が観察し、とりまとめたものです。火山は人間の一生より遙かに長い数十万年の寿命を持ちます。 ●ただし、単成火山と呼ばれる短期の噴火でできた火山もあります。伊豆の大室山や阿蘇の米塚が有名ですね。大室山の写真は実体視できます。真ん中に仕切りを入れて、左の写真を左目、右の写真を右目でみると立体的に見えます。 ●複式火山: 一つの火山でも、何度もの噴火活動の歴史があり、その構造は複合的です。富士山も現在の端正な姿の下には、古期火山の山体が隠されています。 ●カルデラは噴火により山頂部が陥没してできたと一般には説明されています。カルデラ火山の代表には箱根火山や阿蘇火山があります。 ●一方、日本列島が形成された第三紀中新世という時代に形成された火山はすでに活動を終え、断片的な溶岩、火砕流堆積物が存在するだけとなり、おもしろい形の山体を形成します。 ●普通の(?)火山は噴火しても、影響範囲は火山の周辺のみです。溶岩流や火砕流の影響範囲はあらかじめ予想することができます。補足資料にリンクした火山ハザードマップデータベースを参照してください。 ●一方、人間にはどうしようもない巨大噴火の可能性もあります。九州にある巨大カルデラ火山は過去に大噴火を引き起こしていますが、日本の半分くらいは生物が絶滅するくらいの規模でした。怖い話ですが、知っておく必要があります。 ●阿蘇カルデラは約7万年前、姶良カルデラは約22000年前、喜界カルデラは約6300年前の大噴火で形成されました。これは地球の歴史でいうと“ついさっき”、ということになります。大カルデラ噴火は終わったわけではないという認識が重要でしょう。 ●関東に住んでいますので、富士・伊豆の火山については知っておきましょう。なぜ、富士山がそこにあるのか。伊豆半島はどこから来たか。どんなことと関係しているのか、教科書を読んで考えてください。 ●伊豆半島はフィリピン海プレート上にあり、プレートの北上とともにユーラシアプレート、北アメリカプレートと衝突し、丹沢山地を形成しました。プレートの境界は海洋域では駿河トラフ、相模トラフとして認識できます。これらのトラフは東海地震、東南海地震、関東地震の震源であり、大地震の再来は必ず近い将来にあることを私たちは認識しなければなりません。 ●日本の火山のほとんどは最近活動を始めた火山です。一方、日本列島形成時に活動し(ざっくり2000万年前)、地質から火山だったとわかる火山もあります。 ・瀬戸内海の八島、讃岐富士、福島の霊山、上州の妙義山、荒船山、あたりが有名です。 ・千葉県にも溶岩があります。鴨川の嶺岡山系の海岸に枕状溶岩が残っています。なんとなくロマンを感じませんか。 ●火山は災いだけでなく、恵みも私たちにもたらしてくれます。教科書を読んで、しっかり勉強しよう。 ●火山がもたらす金属資源は日本の発展を支えてきたとともに、歴史を形成してきました。武田氏や奥州藤原氏の金が有名ですね。 ●園芸用玉土や石材など、意外な面で役に立っている火山噴出物もあります。 ●私たちが見て火山とわかる火山は、火山としては若造です。成長過程にあると同時に、脆く崩れやすい性質も持っています。火山体が侵食されていく過程で山麓には扇状地が形成されます。時には土石流も発生します。でも、それは予見できる事でもあります。 ●トイレに入ったらトイレットペーパーのカバーを見て、生産地を確認してみよう。富士山南麓の地名が書かれていないでしょうか。それは火山は降水を吸収するスポンジのようなもので、山麓に豊富な水資源をもたらします。 ●過去の噴火の歴史を知りましょう。それは、現在の私たちの行動の指針になります。災害については後期の講義で詳しく説明します。