1.まず画像を見てみよう 最先端の技術だけがリモセンではない。解析者が画像を判読する技能を持つこと。科学のための科学ではなく、社会のための科学となるために、解析者の総合性が一番重要な時代になりました。

1 ・衛星画像には広域を見ることができる(空間性)、繰り返し観測する(時間性、歴史性)という特徴があります。画像からは多様な地表面を観察することができます(多様性)。画像を観察することにより、様々な対象や事象の間の関係性を見つけることができます(関係性)。この4つの~性は環境の性質そのものです。だから、衛星画像は環境を解析する優れたツールなのです。
・さらに、人間の眼には見えない波長、周波数の電磁波で観測することにより、地球表層のいろいろな性質や特徴を知ることができます。
・そして、なんといってもデジタルデータであり、コンピューターで解析できるという点が、衛星リモートセンシングの様々な可能性を生み出しています。
2 ・まずは、最も広域を観測できる静止気象衛星です。どんなにがんばっても地球の半分しか撮影できません。でも、アメリカやヨーロッパと協働すれば、常に地球全体を見ることができます。パートナーシップはSDGsの17番目の目標。
・左は日本の気象衛星“ひまわり4号”の画像です。みなさんはきれいな円形をした地球を見慣れていると思います。しかし、ひまわり衛星は回転しながら地球表面を走査して画像を取得します。撮影した直後の画像は歪みを持っていますが、画像処理を施すことによって地球の形になるのです。
・普段見慣れている画像も、その背後には多くの方々の努力があるということを知ることは、これからの人生に役に立つかも知れませんよ。
・右下の画像は日本付近の拡大です。
3 ・NOAA衛星はアメリカ気象海洋局(National Oceanic Atmospheric Adminitrtion)と同じ名前を持つ気象衛星です。雲の動きを捉えることを目的としていたため、刈り幅(地表面を撮影する幅)は約2700kmであり、広域の画像を撮影することができる。
・左はヨーロッパ上空を通過したNOAAの画像です。見慣れた地域が写っていますね。この範囲の気候、植生、地形、暮らしはどういう状況でしょうか。
・画像には様々な情報が記録されています。それを読み解くのはあなたです。
・右の画像は日本のOCTSというセンサーの画像です。残念ながら1年ほどしか運用できませんでした。
4 ・ランドサット5号のTMという名称のセンサーが捉えた関東地方の画像です。1987年5月21日の画像です。
・一見、自然な色合いに見えますが、RGBのG(緑)に近赤外の画像を割り当てています。近赤外は緑の葉によく反射される特性があるので植生域が濃い緑で表現されています。
・この画像から何を読み取りますか。この時期、水田は移植直後です。水は反射率が低いのので水田域は暗く見えます。関東平野における水田はどのように分布していますか。地形と対応しています。説明は考えてください。
・山地における緑の濃さの違いは何ですか。主に樹種の違いを表しています。
・その他、拡大すると様々な自然の特徴や、人間の営みが見えてきます。それは時として問題であるのです。GoogleEarthを活用してください。
5 ・多チャンネル(他バンド)の衛星画像の発色は目的に応じて変えることができます。この画像では赤に近赤外を割り当てているので、植生域が赤く発色しています。
・雲の分布に注意してください。パターンが見えますね。これは何を現しているのでしょうか。
・霞ヶ浦、印旛沼、東京湾といった水域の上、あるいは利根川下流の沖積低地の上には雲がありません。なぜですか。
・平野の中の都市域のパターンはどうなっていますか。何と対応していますか。
・ひとつの画像はたくさんのことを語りかけてくれます。
6 ・この画像を使って、何でも良いので10分間話をしてくださいと言われたら、何を話しますか。
・地形のテクスチャー、地質と地形、構造線、など地形、地質に関する話はたくさんできそうです。
・最近の水害では狭窄部の存在が治水上の課題になりました。狭窄部はどこにありますか。
・この画像には三つのプレートが含まれていますね。
・まだまだたくさんの物語を語ることができます。
7 ・50年近く前、この画像を見た地質屋さんは涙を流して感動したのではないかな(もちろんランドサット1号の画像です)。
・たくさんのリニアメントが見え、方向性を持っています。共役断層のパターンが見えますが、日本列島が東西に圧縮されていることを現しています。圧縮の要因は説明するまでもないですね。
・画像中上部に跡津川断層、牛首断層も見えます。その他、有名な断層も見えています。
・この中で、大地震を起こした活断層はどこにありますか。
・地球の営みが画像からよくわかります。
・原子力発電所の位置もわかります(これは地図で場所を確認してください)。
8 ・古いランドサット画像ですが、東海、関西の地形の康応がよく解ります。
・中央構造線がよく見えますが、大小様々な断層が見えます。
・真田太平記で草のもの(真田の忍者)のお江さんが地震によって九死に一生を得たのはどこでしょうか。その断層名は。
・奈良盆地はなぜ四角いのでしょうか。一辺が琵琶湖西方まで伸びていますね。
・阪神大震災を引き起こした野島断層も見えます。
・都市も見えます。広域の画像の中に人の営みを重ねて見ることで、自然と人の関係性について考えることができると思います。
9 ・1986年にフランスのSOPT衛星が運用開始したときは驚きでした。
・20mという空間分解能で地表面を観測できるのです。
・SPOT衛星は今も継続して運用されており、災害や農業はじめ様々な分野で使われています。
・日本も“継続”ということを考えなければなりません。それができなかったのは...政治、行政と対峙しなければ人類にとって価値のある地球観測は達成できないのです。
10 ・SPOT衛星は10mの白黒画像を撮影することができましたが、当時としては驚異的でした。東京ドームが見えますからね。
・今ではESA(ヨーロッパ宇宙機関)のSentinel-2衛星が5日に一回、10m空間分解能の可視・近赤外画像を提供してくれます。
・地球観測で日本の時代は終わってしまったのだろうか。
11 ・性能的には古くなってしまいましたが、広島市の都市域の画像です。
・1996年撮影ですが、この頃は日本も高分解能センサーの開発競争に参戦できていました。
12 ・1999年には民間が1m空間分解能のセンサーを搭載した衛星を打ち上げるようになりました。
・アメリカのIKONOS衛星の画像です。
・今では30cm分解能の画像も入手可能です。日本の偵察衛星はどうなっているのだろうか。
13 ・火山が噴火すると直情の飛行は禁止されます。
・しかし、衛星だったら高空から画像を撮影することができます。
・問題はコスト、情報の伝達時間、画像の判読でしょう。
・災害では衛星技術者がリエゾンとして現場に入り、情報の仲介の行うとよいと思いますが、緊急時に役に立つ情報を提供できるだろうか。
14 ・これは1万分の1の縮尺に調整されたIKONOS画像です。
・林業における森林管理には1万分の1の空中写真を使うことができます。ということは森林管理にも衛星を使うことができるということです。
・リモートセンシングと測量の分野の垣根はどんどん低くなっています。
15 ・最初に日本を撮影した衛星画像はランドサット1号のMSSセンサーです。
・画像がコピーで申し訳ないのですが、1972年の関東平野です。現在と何が違うでしょうか。違い探しゲーム!
16 ・これは1991年のランドサット5号TM画像です。空間分解能が上がっています。
・前の画像と比較することで、読み取れる事象がたくさんあります。
・GoogleEarthで過去のイメージを表示させて変化を確認してください。[表示]-[過去のイメージ]
・GoogleEarthはTrue Colorで表示されますが、この画像はフォールスカラーです。地表面の特徴が際立つことがわかるでしょう。
17 ・あまり美しくない画像ですみません。
・真ん中が多摩ニュータウンです。
・ここでは都市開発が進んで、狸の生息場所が脅かされたため、狸どもは人を化かして追い出そうとしましたが、あえなく破れ、人の中に紛れ込んで暮らすようになりました(平成狸合戦ポンポコ)。
・土地利用、土地被覆の変化の陰には様々な歴史、物語、が隠されており、現在の世界を形成しています。私たちは過去の位置づけをはっきりさせた上で、未来を想像しなければなりません。
18 ・ランドサット5号のTMは熱赤外センサーを搭載していました。残業になるため、鳩山の受信局ではなかなか夜間画像の取得が進みませんでしたが、1984年8月14日の夜9時頃の雲の少ない関東平野周辺の地表面温度画像が得られました。
・何を読み取ることができますか。
19 ・衛星データは今では世界各地の画像の入手が可能になっています。よい時代になりました。研究する題材は山ほどあります。もったいないなぁと思いますが、リモセンの技術だけでは環境はわからん、ということです。
・これは185年2月27日に撮影されたUAEの画像です。ドバイとアブダビも見えます。沙漠地域ですが、沿岸は結構湿度も高いのです。東方の山沿いにアラインという街がありますが、ここは快適で、東京に対する軽井沢、箱根といったところです。
・右の黒い部分はオマーンの山地です。そこからワジが沙漠に流れ込んでいるのが見えます。このワジから時折供給される地下水が地域の重要な水資源になっていますが、地下水位は下がり続けています。
・インシャアラー。水がなくなったらまた沙漠の生活にかえるさ、と人は言うのだが。
20 ・1985年は日本がアブダビ石油の採掘権を得た年だったと思います。NHKのプロジェクトXでやっていました。
・UAEは石油による外貨収入で国を興し、発展しました。
・1972年と1985年のアラインの比較すると都市域が拡大していることがわかります。GllgleEarthで最近の状況をみるとますます拡大しています。
・明らかに供給量より多い地下水資源を使っていると思われますが、地域の将来はどうなるのだろうか。
21 ・沙漠の水資源探査の可能性の一つに合成開口レーダー(SAR)があります。
・砂に覆われた沙漠の中に、かつての水系(谷)を見つけることができれば、地下水の探査に使えるかも知れません。
・LバンドSARは乾いた砂を透過する能力をもっているので、埋もれた谷を探すことも可能です。
・ただし、実用化の可能性は不明。それよりも、砂の下に隠された遺跡の発見に力を発揮しているようです。
22 ・リモートセンシングによる地球環境変動研究の重要な目的に、変動を発見するという課題があります。
・地球環境の変動は広域でゆっくりじわじわ進行するというよりも、地域性に応じて特定の場所で発現することが多いからです。
・例えば、ボレアル(北方)林の変動は山火事、虫害、永久凍土の局地的融解、あるいは人間活動といった現象、事象をきっかけにして発現するからです。
・この画像はロシア沿海州のシホテアリン山脈。北方林の南限であり、気候変動の影響を受けやすいと考えられますが、それ以前に伐採が進むとともに、虫害の発生が懸念されています。
23 ・画像の下方に森林が枯死した領域がありますが、虫害(バークビートル)と考えられます。
・なぜバークビートルが発生したか不明ですが、近隣の伐採が誘因になった可能性も考えられています。
・この地域は世界自然遺産にも登録された場所ですが、様々な人間の営みと思いも絡み合って地域の人と自然の関係性を形成しています。
24 ・定期的に撮影される衛星データは季節現象も捉えることができます。
・これは同じ年の雨季と乾季の画像ですが、色合いが全く異なります。
・場所はタンザニア中部ドドマの約30km北方です。雨季には地表は緑に覆われますが、乾季には草は枯れ、樹木は葉を落とします。
・丸く抜けた地域がたくさん見えますが、集落です。集落ができると周辺から薪を採集します。樹木が採取された範囲が丸く見えますが、これが大きくなりすぎると集落を移転させるそうです。
・その他、断層も見えます。地質の違いが色合いでわかります。
25 ・前の画像の場所はこんな感じです。
・1987年から1991年まえ、ここで水文調査を行いました。
・衛星だけを使った研究は、悪く言えば勝手にやっている研究者だけが幸せになる研究です。目的の達成を地域と共有して協働するということが研究者の営みにも必要になりました。
・それがSDGs、Future Earthです。