第2回課題に対するコメント 

非常に深い課題を出してしまいました。でも、みなさんしっかりと書いていただけました。コメントはもう少し時間をください。

日本は良い国だ

その通りです。こんな豊かで自由な国はちょっとありません。日本では安全・安心に関わることは行政に委託することができます。警察、消防、医療、福祉、教育、などなど。新型コロナ禍が収束したら是非とも世界を見てきてください。ENGINEでは少々不足かも知れません。できれば世界の田舎中の田舎に行ってきてほしいと思います。そこで日本の暮らしを振り返ってほしいと思います。

科学技術の恩恵

近藤は鉄腕アトム(手塚治虫)で育った世代です。あの頃は科学技術がゆとりを生み出し、人はより創造的な仕事に従事することができるとみんなが思っていました。ある程度は実現されているとは思いますが、総体として日本はゆとりある社会といえるでしょうか。科学技術と社会の関係性を問い直すタイミングがやってきたと感じています。気候変動やCOVID-19の災禍と同時に、パリ協定、SDGsが進行しているのはその表れだと思います。日本の政策の中にも萌芽があります。国土形成計画や環境基本計画などを.調べてください。科学技術も知識や技術の生産の段階から、実践の段階に遷りつつあります。

社会と科学のリンク

確かにこのリンクがうまくいっていないように感じます。なぜだろうか。いろいろ理由があると思いますが、日本人が科学のベネフィットのみを享受し、リスクやコストに注意を払わなくなっていることが大きいのではないかと近藤は考えています。この状況はオルテガ・小林の文明社会の野蛮人仮説が成り立っていることを意味し、文明は衰退に向かっていることを意味しているのかも知れません。「文明社会の野蛮人」で検索してください。

疑似科学

私も科学と疑似科学を峻別できる日本人でありたいと思います。疑似科学については多くの記事がありますので検索してください。近藤は答えがひとつでない、あるいは複数ある問題に対する理解がまだ不足している様にも思います。物理や数学といったニュートン・デカルト型の科学は原理によって答えがひとつ決まるという特徴があります。しかし、環境問題はその要因が複数あり、要因すべてを特定することも、相互作用を解明することも難しい場合があります。さらに人間の側面も問題の捉え方を左右します。こういった問題を理解できるリテラシーを教育の力で醸成したいものです。その取組の成果のひとつが2022年から始まる高校「地理総合」の必履修化ではないかと思っています。

科学の成果の意味

意味を探求することが重要だと近藤も考えています。そもそも研究の目的には階層性があります。目的を達成した先に何があるのか、達成したものの意味は何なのか、常に問い続けることが必要です。例えば、リモートセンシング解析でわかった土地利用の変化の意味するところは何か、その先にさらに解くべき課題はないのか。トップレベルの目的を意識することが研究の持続性を生みます。このことは仕事においても同じ。社会人として成長できるマインドを醸成してください。
日本人のノーベル賞の意味を問うということは極めて大切なことだと思います。世界の中における日本の生き様とも関係してきます。ただし、答えはひとつでありません。日本人がどのような未来を描いているのか、という考え方をはっきりさせる必要があり、その上で意味を考えてほしいと思います。

事例研究、地域研究のメタ解析、比較研究の重要性

上記の記述に関連しますが、昨今の風潮では事例研究や地域研究は格の低い研究と見なされることがあります。そんなことはありません。個々の事例を集めて、メタ解析や比較研究を行うことにより、より上位の課題にアプローチすることができます。例えば、印旛沼のような閉鎖性水域の水汚染問題の研究は事例研究かも知れません。しかし、霞ヶ浦、琵琶湖、東京湾、瀬戸内海、伊勢湾といった高度に人間に利用されている水域の研究事例を集めてメタ解析すると、近代文明のあり方、といった大テーマに結びつけることができます。この様な、集積し、メタ解析するという研究手法が昨今の評価社会の中でやりにくくなっていることは大問題だと近藤は考えています。でもこのような研究のあり方に対する検討から、社会の変革につながるアイデアを生み出すこともできると思います。トップレベルの課題にはその下位レベルの様々な分野の研究成果がぶら下がっており、トップレベルの課題に収斂していくという見方を広めたいものだと考えています。

受益と受苦

環境社会学では受益圏・受苦圏問題という解決が極めて困難な問題に取り組んでいます。元々は新幹線の騒音公害にルーツがありますが、新幹線の利用者(受益者)と沿線の住民(受苦者)が分断されているような問題です。原子力災害も同様の構造を持っていると思います。受益者である首都圏の住民と、受苦者である福島の住民の間にまだまだ大きな溝があるように感じます。エンパシー(共感)の精神をもって、受益と受苦を分離させない仕組みを作ることができないものかと思い、考え続けています。

遺伝子組み換え-背景にある思想

便利な技術ですが、受け入れがたいと考える人もいます。欧米と日本という関係で考えると、宗教や自然観に基づく考え方の違いがあるように感じています。神が創った国では、神の意志を知ることにより(これが研究ですね)、神の世界に近づけるといった感覚があるように思います。遺伝子組み換えも神が創った仕組みの応用であり、文明の発展と捉える。反論もありそうですが、国際的な議論に際しては、宗教も含む様々な背景を考慮する必要があると考えています(特に交渉の時に)。

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 書き下ろしですのでミスタッチ等あったらご容赦ください。