論文の書き方・発表の仕方
「文明社会の野蛮人」という言葉を知っていますか。もとはスペインの哲学者、オルテガの「大衆の反逆」という著作から出てきた言葉です。「我々の生活は科学技術の恩恵を受けて成り立っているが、その背景を知らず、誰のどのような努力、援助、犠牲、投資、等の上に成り立っているかに気がついていない人」、こんな風に理解していますが、これを敷衍すると、「自分の生活が誰のどんな努力、援助、犠牲、投資、等で維持されているか気がついていない人」ということになります。ゼミも同じです。みんなの支援を受けて自分がいる。みんなが聞いて良かったと思える発表を行えるように努力してください。
★研究は発表しなければ何もやらなかったことと同じである
★成果を出すことに責任を持ち、出した成果に責任を持つこと
★ゼミは参加者全員のためにならなければならない
目次
ゼミにおける発表の留意点
1.論文紹介
以下の観点に沿って発表しましょう。
- 目的は明瞭か
- その目的はなぜ重要か
- どんな手法、データを使っているか
- その手法、データは使えるか
- どのような結果を導いたか
- その結果は新しい知見か
- どのような考察を行ったか
- 結論は明瞭か
- 論文はひとつ読めば良いものではない。引用文献をあたり、その研究に至った経過まで説明できるように。
論文はどこにあるか
その他、学会や大学のホームページで公開しているサイトを探して見ましょう。
2.研究発表
以下の観点に注意して発表してみてください。
- 基本的な流れは、上記の論文紹介と同じ。
- 聞いている方々が理解できる発表を心がけましょう。
- 自分がわかっていても、人はわからないかも知れません。この点を留意してください。
- 論文用の図表と発表用の図表は別です。発表用は大きく、わかってほしいことは書き込んでしまいましょう。
卒業論文提出までのスケジュール
人生締め切りばかりです。でも、締め切りが良い仕事の生みの親でもあります。締め切りを念頭において、逆算して“今何をやるべきか”考える習慣をつけましょう。
- 夏休み前:@解くべき課題を見つけること、A研究の手法を身につけること
この時期は、勉強と手法のトレーニングに励みましょう。研究テーマについて指針は出しますので、いつでもどこでも頭の中において考え続けること。
- 夏休み:結果を蓄積すること
結果を出しましょう。結果は結論ではないことに注意。様々な試みを行い、その成果図表をじっくり眺めることにより、ひらめきが出てくるはず。10の作業のうち、1の面白い図表ができればよいのです。試みをたくさんすること。
- 後期:結果>考察>再検討>結果>・・・>結論の繰り返し
ひとつの結果が出たからといって安心しないこと。思わぬミスをしているかもしれません。徹底的に見直して結果を確実なものにしていきましょう。さらに行うべき作業が見えてくれば、それを実行します。結果がたまってきたら、論文のストーリーを考え始めます。
- 10月後半:論文の目次案の作成
目次案を作成すると、全体の流れが自分でも見えてきます。各章の節ごとに、自分が何を主張するか。その主張のためにどんな図表を作成するか考えて、目次案に箇条書きでよいから記入してみましょう。
- 12月初め:最初のドラフトの提出
この時期にドラフトができていれば、原稿のキャッチボールによって完成度を高めることができるでしょう。
- 1月終わり:卒業論文の提出
研究論文は発表しなければ何もやらなかったことと同じ。近藤研では成果は必ず学会発表、論文投稿することを目標にしています。
論文作成の留意点
筑波大学山中勤先生による科学論文の書き方、グラフの正しい作り方
1.目的
- ”本研究の目的は〜である”という文章が書けること
- その目的は重要か
- 重要でない研究は意味がない: 自分がおもしろいから、だけじゃだめ。重要であるという“論”を構成するのが論文を書く訓練になります。
- 十分なレビューに基づいて論ずる: なぜ自分がやろうとしていることが重要か、それは過去の研究にあります。自分のやることが従来の知見を一歩進めることになるか、十分検証すること。
- すでに行われている研究では意味がない: 論文はレポートではないことに注意してください。論文は主張です。レポートは纏めです。
2.手法・データ
- 目的の達成のために手法・データは適切か: いくら目的が重要でも、実現できなければ意味はない。
- 自分のデータか、他の研究の引用かを明記: これぞ研究のオリジナリティーです。論文は個人のアイデアの主張。
- 読者が追試できるような書き方が望ましい
3.結果
- 得られた”事実”を客観的に記載する
- 本研究で明らかにしたこと、既存の知見を区別すること
4.考察
- 結果および既存の研究成果に基づいて、こう考えるのが妥当である、こう考えざるを得ない、ということを論ずる
5.結論
- 本研究で明らかにしたことについてまとめる。
- 格好の良い成果でなくてもいい。研究は積み重ねで、一歩先に進めれば良い。
謝辞
- 自然科学の研究は積み重ねである。先人の成果を尊重すること。
- お世話になった方には必ず礼を尽くす
引用文献
- 雑誌により書式は異なる
- 投稿規定あるいは指定の書式に従うこと